約 3,643,411 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/233.html
「ゆっくりサドンデス」 家に帰り、鍵を開けようとすると…何故か、鍵は開いたままだった。おかしい。朝、家を出ると きは確かに鍵をかけたのに。何より、蝶番に挟んでおいたシャープペンの芯が折れて、落ちている のだ。嫌な予感がする… 「なんだこれは?」 中に入ってみると、そこには無数の足跡のようなものがあった。しかし、普通の足跡とは違う。 少なくとも、人間の足跡ではない。形は…綺麗な円形だ。僕はこの足跡の主がどんな生き物か知っ ている。この数からすると…30匹ぐらいか。かなり多いな。 足跡はリビングまで続いている。ああ、おそらく僕の嫌な予感は的中するだろう。リビングに至 る廊下を歩き、ドアを恐る恐る開くと… 「これっ…はっ…!?」 言葉が喉に詰まった。大型液晶テレビ、高級ソファー、イタリア直輸入のガラス細工…他、部屋 中全体が荒らされていた。テーブルの上に用意しておいた夕食も、食べかすだけしか残っていない。 そして… 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 総勢30匹のゆっくりたちが、神経を逆撫でする台詞で僕を出迎えた。僕はこぶしを強く握り締め る。いったい何がどうなってるって言うんだ!?こいつらはどうやって家の中に!? そんな中、一匹のゆっくりれいむがゆっくり3匹分だけ前に出た。 「おかえりなさい!!ゆっくりしていってね!!」 「……!!」 全国模試一位の応用力がある僕は、すぐに理解した。 このゆっくりれいむは、僕が愛玩動物…兼虐待動物として3日前から飼っているやつだ。多少虐待 しても30分もすればケロリと忘れてしまうから、ストレス発散の対象として重宝している。 家を出るときは、あらかじめ用意した夕食にガラスケースを被せて辞書を2冊ほど載せておいた。 だから、ゆっくり1匹ごときの力では夕食に口をつけることなどできる訳がないのだ。毎日そうする ことで、食べ物が見えるところにあるのに食べられないという苦しみを味わわせ続けてきた。 そして今日。ゆっくりれいむは部屋を跳ね回って遊んでいるうちに、玄関の扉を開けたのだろう。 外に出たゆっくりは仲間を呼び寄せ帰って来た。30匹もいれば辞書2冊の重さなど問題にならない。 僕の夕食を食べつくした後は、30匹が思い思いに跳ね回ってゆっくりしたのだろう… 「くそっ、やられた!!」 床を思いっきり殴りつける。その大きな音に、30匹のゆっくり達はびっくりして跳ね上がる。 「おにいさん、どうしたの!?」 「びっくりしたよ!!ゆっくりできなかったよ!!」 「びっくりさせないでね!!ゆっくりさせてね!!」 ゆっくりめ…こんな屈辱は生まれて初めてだ!! 「おにいさん!!れいむのなかまだよ!!かわいいでしょ!!」 「かわいいでしょ!!かわいくてごめんね!!」 「それよりおなかがすいたよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 一匹でもウザったい害獣を30倍に増やしておいて、「かわいいでしょ」などとほざくゆっくりたち。 暴れまわったゆっくりたちは、空腹を訴え始めた。そして、この流れだと… 「れいむはここでずっとゆっくりするよ!!」 「ここはまりさたちのおうちだよ!!れいむもゆっくりしていってね!!」 「おにいさんはゆっくりできるひと?できないならでていってね!!」 ゆっくりたちの生態は知っている。都合のよい住処を見つけたら、まず食事を要求し…最終的に は“自分の家”宣言をするのだ。今すぐにでもバラバラにブチまけてやりたいが、それでは僕の 溜飲が下がらない。もっと……もっと苦しめて……!! 「おにいさん!!れいむの連れてきたともだちかわいいでしょ!!ゆっくり感謝してね!!」 「………」 3日間飼っていたゆっくりれいむが、僕の目の前で胸を張る。平手でぶっ飛ばしそうになったが、 歯を食いしばって何とか耐えた。 「れいむのともだちいっぱいいるから、おにいさんもさみしくないよ!!ゆっくりうれしいでしょ!!」 「…あぁ、うれしいさ」 僕のストレス発散の道具を、30倍に増やしてくれたんだからな… 「さて、ゆっくりしているところ悪いけど、別の場所に移動しようか」 「そこはゆっくりできるところ?」 「あぁ、こんなところよりずっと綺麗で、たくさんゆっくり出来るところだよ」 「やったあ!!みんなでゆっくりしていこうね!!」 「ゆっくりー!!たくさんゆっくりするよ!!」 「計画通り…」 僕の声が聞こえなかったのか、聞こえても気にならなかったのか、ゆっくりたちは反応しない。 そんなゆっくりたちは、列を成して空室に入っていく。 部屋の真ん中にゆっくりたちを集めて、周りを柵で囲む。見たところ、このゆっくりたちはまだ小さい らしいから、この程度の高さでも飛び越えることはできないだろう。 「どうしてとじこめるの!!ゆっくりできないよ!!」 「これから食べ物を持ってくるよ。それまではその中でゆっくり待っててくれ」 「わかった!!ゆっくりまってるよ!!」 多少窮屈でも、食べ物のためなら我慢する。そんなゆっくりの生態も、僕はよく知っている。だが、 僕が用意するのは食べ物ではない。食べ物の代わりに僕は五寸釘と金槌を持ってきた。 食べ物を持ってくるものと思っていたゆっくりたちは、僕が手にしているものを見て不平不満を口にする。 「おにいさん!!たべものはどうしたの?」 「おなかすいたよ!!ゆっくりできないよ!!」 「あー、もう少し待っててくれ」 「もうまてないよ!!はやくゆっくりもってきてね!!」 「おなかすいた!!おなかすいてゆっくりできないよ!!」 言っても分からぬ馬鹿ばかり… まあ、そんな馬鹿とももうすぐさよならだ。そして、僕はゆっくりを“かわいがりはじめた”。 「あーお腹すいたなー。お、ちょうどいいところにゆっくりがいるじゃないか」 「ゆっ!?ゆゆっ!!?」 「ゆっくりは甘くておいしいんだよなー。じゃあ今日の夕飯はゆっくりだ!」 僕の言葉を聞いて、うろたえ始める30匹のゆっくり。もう空腹などどこかへ飛んでいってしまったようだ。 「れいむはおいしくないよ!!ゆっくりたべないでね!!」 「まりさもおいしくないよ!!たべるなられいむをたべていってね!!」 「ゆーっ!!もうやだ!!おうちかえる!!おにいさんとはゆっくりできないよ!!」 「おにいさんあっちいって!!れいむをたべようとするおにいさんはでてって!!」 柵を越えて逃げようとするが、そんなことは無理だ。こいつらの体格でこの柵を乗り越えることはできない。 「お前達、食べられたくないか?」 「うん!!ゆっくりたべないでね!!」 「お兄さんはお腹が空いてるんだ…でもお前達が食べられたくないなら、しょうがないな」 「ゆっ!?」 期待に目を輝かせるゆっくりたち。このまま開放されるとでも思っているのだろうか。だが、そんなことは しない。全員食べるよりも酷い…地獄絵図をお前達に見せてやる。 「お前達、食べられたくなかったら他のゆっくりを食べろ。最後に残った一匹は食べないでやる」 「ゆっ………?」 足りない頭で何を言われたのか必死に考えている、という顔だ。中身が餡子じゃ無理もないか。 「へちゃむくれの饅頭にも分かるように言ってやる。生き残りたかったら、他のゆっくりを食い尽くせ!!」 「ゆ゛ーーーーーーっ!!!」 それがスタートの合図となった。一匹のゆっくりまりさが他のゆっくりに襲い掛かる。他のゆっくりに比べて ゆっくりまりさは生きるためなら手段を選ばない、一言で言うと悪い性格のゆっくりだ。 「いだいーーー!!!だべないでええええ!!!」 「うっ…うまっ…これうまっ!」 隣のゆっくりれいむをむしゃむしゃと食べるまりさ。それを見て他のゆっくり達も共食いを始めた。 「びゃああえがあああ!!どおじでえ゛え゛え゛え゛!!」 「ゆっぐりできな゛い゛よ゛お゛お゛お!!」 ここまでは普通の虐待。ゆっくり虐待においてセオリーとされている方法だ。 そして…今、最初のゆっくりまりさが一匹目を食い終えたところだ。 「ふむ、あいつが今のところ優勢だな」 僕は次の計画に移ることにする。 「すうっ……ゆっくりしていってね!!!!!」 「ゆっ!!??」 可能な限りの大声で、お決まりのフレーズで呼びかける。それに反応したゆっくりたちは皆、びっくりして 食い合いを止めてしまう。何が起こったのか数秒遅れで把握すると、僕の方を向き… 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 今まで醜い争いを繰り広げていたことも忘れ、僕に笑顔で応じる。こればかりは本能だから逆らいようが ないのだろう。つくづく馬鹿なやつらだ。馬鹿すぎてかわいそうになってくる。だが、これでゆっくりたちの 動きは止まった。やるなら今だ。 僕は柵に入って、先ほどのゆっくりまりさを見つけると、そこから動かないように手で固定する。 「ゆ!?ゆっくりだしてくれるの!?」 おそらく、一番がんばった自分は特別だから、特別に出してもらえると思ったのだろう。 餡子でものを考えるから、すべてを前向きにしか捉えられないらしい。確かに、特別であることにかわりはない。 …お前の考えてる“特別”とは、まったく逆だけどな。 「そおおぉいっ!!」 「うゆぎゅう゛う゛う゛う゛う゛!!」 ゆっくりまりさの頭上から、真っ直ぐ五寸釘を打ち下ろしてやった。ガンガンと打ち込んでいくたびに、 まりさはビクビクと痙攣したように震える。今、30匹のゆっくりたちの中で一番優勢だったゆっくりが、床に しっかりと固定されてしまったのだ。 「どおじでえええ!!ゆっぐりざぜでぐれ゛な゛い゛の゛お゛お゛お゛!!!」 痛みに暴れ狂うが、床に打ち込まれた五寸釘にど真ん中を貫かれているのだ…逃げられるわけがない。 そして、僕は他のゆっくりたちに呼びかける。 「おい、お前達、どうしたんだ?」 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 「早く食っちまわないと、お前達を食べるよ?」 「ゆ゛ゆ゛ーーーーーっ!!!」 捕食対象となるのは…当然、五寸釘に貫かれて動けないゆっくりまりさ。低脳なゆっくりたちも、 最小の労力で生き延びるにはどうしたいいか…それくらいはわかっているらしい。すべてのゆっくりが 一匹のゆっくりまりさに群がり、食い漁る。 「ぎゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!はずしでえ゛え゛え゛え゛!!」 「まりさはゆっくりしんでね!!うまっ…これうまっ!!」 「まりざがああ!!まりざがだべるのお゛お゛bっぼばあ゛お゛!!!」 五寸釘に打ち抜かれさえしなければ、お前の勝ちだったのにな。あぁかわいそうかわいそう。 そのうちゆっくりまりさが食べつくされると、先ほどと同じように争いが始まった。一匹が他のゆっくりを 圧倒しているのを見ると、また先ほどのゆっくりまりさと同じように五寸釘で打ちつけ、 他のゆっくりたちをけしかける。 「うめ…これめっちゃうっm!みぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「その下品な言葉遣いは止めろ。食べるときは『サイン、コサイン、タンジェント』だ」 ぐりぐりと五寸釘をねじ込みながら、他のゆっくりたちをにらみつけて“教育”する。 僕だったら恥ずかしくてこんなこと言えないけどな。それ以降、他のゆっくりたちは口汚い言葉を吐かなくなり、 『サイン、コサイン、タンジェント』と優雅な言葉遣いをするようになった。恐怖を与えれば、ゆっくりたちは 一発でモノを覚える。 でも、食事のスピードで抜きん出るゆっくり…そいつらに五寸釘を叩き込む僕の手は緩まない。 「どおじでごんなごとずるの゛お゛お゛お゛お゛!!!」 と抗議の声が、まわりのゆっくりたちからも上がる。 「お前達が食われないように、強いゆっくりを懲らしめてやったんだ。やさしいだろう?」 同じことをしばらく繰り返す。そのうち、馬鹿なゆっくりたちも理解し始めた。 他のやつらを食べなければ、自分が食べられる。しかし、あまりに相手を圧倒してしまうと自分が五寸釘で 貫かれる。僕の“弱きを助け、強きを挫く”作戦に、ゆっくりたちはどうしたらいいのか分からなくなっていた。 「ゆっ…えぐっ……ゆっぐりざぜでよ゛お゛お゛!!」 食わなければ食われる。食いすぎても痛い目にあう。混乱のあまり泣き出すゆっくりもいた。そんなゆっくりも 僕は五寸釘でゴスンと打ち付ける。 「ゆぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「あんまりゆっくりしてるとおしおきだ。言っただろう?僕は“お腹が空いてる”って」 「どおじでえええ!!どおじだらい゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛!!??」 ゆっくりしすぎても、食べ過ぎても…五寸釘の餌食になる。でも、食べなければ生き残れない。 そんな挟みうちの状況は、ゆっくりたちの精神を確実に蝕んでいた。そうだ、これが見たかったんだ!! 皆が僕の作ったルールに従い、そして苦しむ。ただ潰すだけじゃない。精神的に苦しめなければ意味がない! 数十分後、生き残りは2匹のゆっくり―――まりさとれいむだけになっていた。そのうちれいむの方は 偶然にも僕が今まで飼っていた、あのゆっくりれいむだ。 2匹だけになると、本当にどうしたらいいのかわからなくなるのだろう。 ゆっくりした方が打ち抜かれるのか、食べたほうが打ち抜かれるのか。そんなことを空っぽの頭で考えるから、 2匹は混乱してしまってその場をうろうろし始めた。 「よし、もういいだろう」 「ゆっ!?ゆっくりだしてくれる?」 「ゆっくりたすけてくれるの!?」 僕は2匹のゆっくりを持ち上げて、柵から出る。もうあのまま放っておいても面白くなさそうなので、 別の方法をとることにする。 一本の紐を用意し、両端を2匹のゆっくりにくくりつけて、ぴんと真っ直ぐ伸ばして床に置く。 ちょうど、綱引きと同じ状態だ。そして紐の真ん中に僕は顔を近づける。 「僕は目の前に来たほうのゆっくりを食べることにしよう。 食べられたくなかったら、その紐を思い切り引っ張るんだ」 僕が大きく口を開けると、その意味を理解した2匹は正反対の方向に逃げ出す。しかし、紐に引っ張られて 離れることができない。2匹の力が拮抗しているから、ぴくりとも動かないのだ。 「ゆっ…ゆっ…まりさはゆっぐりしてね!!」 「ゆっ…ゆっ…れいむがゆっくりじてね!!」 自分が逃げ延びるために、ぴょんぴょん跳ねながら相手にゆっくりすることを要求する2匹。 横に逃げることも思いつかない馬鹿だから、きっと力尽きるまで紐を引っ張り続けるのだろうな。 僕はちょっと手を加えることにした。 「そーれ、お前のほうが美味しそうだな」 僅かに優勢だったまりさの方をひっぱる。それに伴って、れいむは同じ距離だけ離れていった。 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!まりざばおいじぐな゛い゛よ゛お゛お゛お゛!!」 「ゆっ…ゆっ…おにいさんありがとう!!ゆっくりしていってね!!」 ダメだこいつ…早く何とかしないと… 僕に助けられたと思ったれいむは、僕に感謝の言葉を告げる。3日間やさしくしてくれたおにいさんが 今回も自分の味方をしてくれたと思っているのだろう。本当に自分に都合のいい考えしか浮かばないやつだ。 そんなことをしているうちに、今度はれいむが優勢になり、まりさが僕の口に近づいてくる。すると… 「うーん、やっぱりれいむの方が美味しそうだな」 「ゆゆっーーー!!い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 れいむを自分のほうに引っ張り、まりさを遠ざけてやる。自分の努力が一瞬で水の泡になったれいむは、 絶望した表情を見せるがそれでも諦めずに跳ね続ける。 「おにいさん!!れいむをたべてゆっくりしていってね!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だべないでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 数分の戦いの末、れいむが僕の口まであと数センチというところまで迫ってきた。 「おー、美味しそうな饅頭だな。いただきまーす」 「なんでええええええ!!!れいむおいじぐないよばお゛お゛あ゛お゛お゛!!!」 「おにいさん!!まりさといっしょにゆっくりしようね!!」 もう勝ちを確信したゆっくりまりさ。息も絶え絶えになり、愕然とした表情のゆっくりれいむ。そして… 僕は振り上げた拳を… 「ゆぎゅうううううあああああああお゛あ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 優勢だったゆっくりまりさに振り下ろした。ふてぶてしい表情が一瞬で歪む。 一気に押しつぶされたまりさは、体中至る所から饅頭をぶちまけながら…絶命した。 「おにいさん!!たすけてくれてありがとう!!ゆっくりしていってね!!」 残った最後の一匹。ゆっくりれいむが飛び跳ねながら僕に近づいてくる。僕の計画も、残り僅かだ。 生意気にも寄り添ってきたれいむを、僕はデコピンで弾き飛ばす。 「ゆゆっ!?なにするの!!ゆっくりあやまってね!!」 「…おい」 「ゆっ…!」 ドスの聞いた僕の声に、れいむは震え上がる。 「これ、食べろ」 指差したのは、ゆっくりまりさの残骸だ。それをみたれいむは、ガクガク震えながら… 「むりだよ!!そんなのたべられないよ!!」 「どうしてだ?お腹すいてるんだろう?」 「たべられないよ!!それはまりさだもん!!たべないよ!!」 こいつ…ついさっきまで30匹の共食い競争をしてたのを忘れたのか? その口についてる餡子は、いったい何だって言うんだ? 「いいから食べろ。10秒以内に食べないと……お前も食べちゃうよ♪」 「ゆゆーーーっ!!!??」 「数えるぞー。10…9…」 「ゆっ!!たべる!!たべるよ!!だかられいむをたべないでね!!」 10秒以内と言っても、ゆっくりの頭じゃ分かるまい。しかし、早く食べないと自分が食べられることは わかったらしい。 「むしゃ…むしゃ…さいんっ…こさ…いんっ」 餡子の脳みそで、さっきのルールを覚えてたのか。思わず笑いそうになった。 あー、腹筋に来る笑いだね、これは。でも残念、そんなれいむとももうお別れだ。 「7…6…5…」 「たんっ…じぇんとぅ…さいっ…ん…こさいんっ…たん…」 「……4321ゼロー!!はい時間切れー♪」 「ゆゆゆっーーーー!!?ぎゃああらお゛い゛お゛い゛あ゛え゛お゛り゛な゛お゛ろ゛い゛がじょれ!!!!」 3日間一緒にいた仲だからな、最後は一思いにぶちまけてやった。僕って優しいな。 こうして悪いゆっくりを虐待し続ければ、いつしか馬鹿なゆっくりたちも気づくだろう。 “悪いゆっくりだけが酷い目にあっている”と。ゆっくりたちに僕の存在を知らしめるんだ。そして… 「僕は新世界の神となる!」 …なーんちゃって。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/752.html
ゆっくり専用動物病院「ゆっくりにっく」 助手を募集しています。 資格も不要で、経験は問いません。 可愛いゆっくり達と楽しくお仕事をしませんか? 俺が手に取ったチラシにそんな文句が踊っていた。 近所で何か建物を作っていると思っていたが、ゆっくり専用の病院だったとは。 ゆっくりといえば、その姿を見ただけで踏み潰す人間もいる一方、その可愛さに惚れ込みペットにする輩もいるという。 近頃では、傍若無人なゆっくりをペット用に躾けるブリーダー、通称ゆっくりブリーダーなるものもいるらしい。 「時給もなかなか良さげだしなあ・・・」 ふと、目が隣の部屋に続く扉に向く。 あの部屋には20匹近くのゆっくり霊夢が閉じ込められている。 気が向いたときに、いつでも潰して遊べるようにしているのだが、いかんせん維持費が高くつく。 親の遺産でまったり生活しているニートの俺には痛い出費だ。 そう、俺にとってはゆっくりなど、ただ潰して遊ぶためだけの道具だ。 患畜である「しあわせー」なゆっくりなんて見たら思わず殺してしまいそうだ。 やめとくか、そう思っていると飼っている猫が擦り寄ってきた。 それと同時に気が付く。 「そういえばお前、お医者さん嫌いだもんなあ。注射は痛いだろうけど、あれはお前のためなんだよ」 「にゃー」 そう、飼い主にとっては善意でも、実際に注射されたり腹を割かれるのはペットなのだ。 ゆっくりの知能など、猫とたいして変わらないはずだ。 きっと、なぜ痛い思いをさせられているのか理解できないだろう。 幸せいっぱいで育ったゆっくりへの「虐待」が見られる場所なのかもしれない。 俺はゆっくりにっくの住所を確認し、家を出た。 「さっそくだけど、これからいいかな?人手が不足しててね」 面接を終えると、そんなことを言われた。 「はい。よろしくお願いします」 ゆっくりのお医者さんは、ごく普通の白衣を着たごく普通の男性だった。 面接をした事務室から出て、受付に移動する。 「まだ受付も雇ってなくてね。これだけ記入してもらって、診療室まで来てもらってくれ。」 渡されたのは、簡易カルテ。 10分前までごく一般的な虐待お兄さんだった俺にいきなり仕事を任せるなんて、本当に人手が足りていない病院だと思う。 簡易カルテを見ると、いくつか記入してもらう項目がある。 飼い主の名前、住所、ゆっくりの種類と年齢など、本当に簡単なものだ。 病院に来た理由を書く欄はなかったので、診療室で最初から話を聞くのだろう。 お客さん(患者)が1人もいなかったので、俺は受付に乗ったゆっくり魔理沙の人形をつついて遊んでいた。 カランコロン。 喫茶店に入ったときのような音が鳴り、扉が開いた。 「こんにちは。初めてなんですけど」 「ゆっくりしていってね!!!」 現れたのは身なりの良い、着物がよく似合ったご婦人。 胸の前で抱えていたのはゆっくり霊夢だ。 ソフトボールより一回り小さいので、おそらく今年生まれた子供だろう。 「では、こちらにご記入いただけますか?」 受付カウンター越しに、簡易カルテと鉛筆を渡す。 「ゆゆっ?これはゆっくりできるもの?」 興味津々に、子れいむは簡易カルテを見ている。 ぷっくりとした体。 瞳は綺麗で、髪の毛のツヤも申し分ない。 リボンの手入れもきちんとされているようで、鮮やかな赤が美しい。 潰しがいがありそうだ、無意識に拳が固くなっていた。 「――っと」 俺は今、助手なのだからそんなことをしてはダメだ。 固くなっていた拳を緩め、子れいむに微笑んだ。 「ゆっくりしようね!!」 ああ、殺したい。 「書き終わりました」 女性が簡易カルテと鉛筆を受付カウンターに置く。 生後3ヶ月。 子れいむは予想したとおり、今年生まれたゆっくりであった。 記載漏れがないことを確認し、俺は女性を診療室へと導いた。 「・・・・というわけで、ウチのれいむにワクチンをお願いしたいんです」 「ははぁ、なるほど」 先生と対面した女性は、退屈していた子れいむを撫でている。 俺は先生の横で話を聞いていた。 女性は、予防接種のために来院したのだ。 最近、この子れいむに野生のゆっくり魔理沙の友達ができたため、感染症を心配したとのこと。 それに夏も近くなり、フィラリアのことも心配だったらしい。 「接種はしますが、あまり野生のゆっくりと遊ばせるのはお薦めできませんね」 「そうですか?」 「遊んでいるつもりでも、ケガをすることもありますし。ケガの箇所を舐めることで感染することがよくあるんですよ」 「でも接種をすれば予防できるのでしょう?」 「いえ、予防接種と言っても全てが予防できるワケではないんですよ。いわゆる、ゆっくりエイズなんかは予防できません」 「まあ」 「他にもいくつか予防できないものがありますので、室内飼いをしたほうがれいむちゃんのためです」 なんだか講座めいたことをやっているが、そんなことはどうでもいい。 注射ではあまり苦しまないではないか。 もっと、拷問のような治療をやって欲しいものだ。 「では、注射をしますか。鬼井君、ちょっとこちらのれいむちゃんを押さえててもらえますか」 「あ、はい」 妄想の中で子れいむを潰していたので、いきなり名前を呼ばれてびっくりした。 俺は女性に差し出された子れいむを、台の上に乗せ、押さえつけた。 「ゆ?おにいさんなにをするの?ゆっくりはなしてね!」 「ちょっと痛いけどゆっくり我慢してね!」 ついついテンションが上がってしまう。 うっかり出てしまったゆっくり口調を、少し反省する。 「ゆゆう!おかあさんたすけて!!ゆっくりできないよ!!」 子れいむが女性に助けを求める。 しかし、これは子れいむの為の処置だ。止めるはずがない。 それにしても、おかあさん、と呼ばれているということは産まれたてを貰ったのだろうか。 「れいむ、我慢してね。そしたら美味しいお刺身を食べさせてあげるから」 その子れいむに、先生の握った注射器が子れいむの額に刺さった。 刺さった細い針は、皮を乗り越え餡子まで進んでいく。 「ゆぎぃいいいっ!!!いぢゃいよぉぉおおおっ!!!!ゆっぐじできないおおおおお!!!!」 手に、逃げようとする子れいむの力を感じた。 それに負けじと俺も力を込める。 「ゆっぎ!!ゆぎいいぃいぃい!!!」 いつの間にか、女性は部屋の隅で耳を押さえていた。 可愛がっている子れいむの叫びは聞きたくないらしい。 こんなに可愛い声で鳴いているのに、酷い飼い主だな。 子れいむを押さえている手には、ぬるぬるとした不気味な体液が溢れている。 涙が台に流れ、まるでおしっこを漏らしたようだ。 「ゆっびひぃ!!!いだいいいい!!!!」 それにしても、たった一本、それもこんな細い針でここまで痛がるなんて、弱いゆっくりとしか思えない。 俺が幽閉しているゆっくり霊夢だったら、こんな針じゃここまで鳴いてくれない。 野生のゆっくりでもここまで騒ぐかは疑問だ。 先生が注射器の後部を押し、ワクチンの注入を始めるとさらに子れいむは声を荒げた。 「ゆっぎゅああっぁあぁ!!!!いぢゃいのおおおっ!!!!おがああざんん!!!だずげでええ!!!」 ワクチンの増加分を吐き出すように、涙をこぼしている。 「れいむごめんね・・・!ごめんね・・!ちょっとだけ我慢してね・・・!」 部屋の隅で女性がぶつぶつ呟いていた。 「おがあああざああああん!!!!どうぢでえええ!?!?!どうぢでれいむをおぉおおお!!!??」 信頼していたお母さん。 目の前にいるのに助けてくれないお母さん。 子れいむは何も理解できなかった。 「はい、終わりだよ」 先生が注射器を抜くと、子れいむはグッタリと仰向けに倒れた。 額を見ていると穴はすぐにふさがった。 こんな小さな穴は特に治療しなくても、すぐ再生できるようだ。 「ごめんね、れいむ。大丈夫だった?」 女性がぐったりとした子れいむを手に取る。 「ゆ・・・・どうじで・・・?どうじで・・・?」 子れいむの中には、自分を助けてくれなかった女性への不信感が蠢いていた。 「このあと、たっぷり可愛がってあげてください。すぐ忘れますよ」 慣れているのか、先生のフォローが入る。 女性はそれに納得し、その場で料金を支払い帰っていった。 「鬼井君、はじめての助手体験はどうだったかい?」 俺が手についた子れいむの体液を洗っていると、先生が話しかけてきた。 「あのれいむ凄い、悲鳴でしたね。結構びっくりでしたよ」 「ペットのゆっくりはあまり痛い思いをしないからね」 「ですよね。野生のだったらあそこまでは騒ぎませんよ」 一瞬、先生の眼が鋭くなったのを感じた。 虐待お兄さんということがバレたのかと不安になる。 「あの叫び声に嫌になる人も多いからね。人が不足して困るよ」 確かに、ゆっくり好きならこの職場は地獄だろう。 可愛いゆっくり達が次々に泣き叫ぶのだ。 「ちょうどいいから、次の手術を手伝ってもらおうかな。ゆっくりには麻酔が効かないから・・・悲鳴を覚悟してね」 俺の返事もまたずに、先生は奥の部屋へと消えた。 手術。 なんて心躍る単語だろう。 覚悟どころか、俺は興奮して震え始めていた。 「ゆ!はやくここから出してね!!おにいさんのおウチに帰してね!!」 ケージに入れられて運ばれてきたのは、バレーボールサイズのゆっくり魔理沙。 成体といえる大きさだ。 黒光りする帽子、やわらかそうな皮に、しなやかな金髪。 非常にゆっくりしたゆっくり魔理沙だ。 実に美しい。 「これは今朝連れてこられたゆっくり魔理沙だよ。一人じゃ苦労するからね。本当助かるよ」 成まりさをケージから出した先生が言う。 鉄製の皿のようなものに粘着質のある液を流し込むと、先生はそれを成まりさの底部に貼り付けた 動けなくするための道具だろう。 「ゆ!?動けないよ!!ゆっくりできない!!!」 なんとか逃げようとしているが、完全に固定されて成まりさは動けない。 「先生、何の手術をするんですか?」 素人目だが、この成まりさは病気をしているようには見えない。 声も大きいし、体もしっかりしている。 「避妊手術だよ」 なるほど。 ポン、と手を打った。 「虚勢手術ではないから、どちらかと言えば楽だよ」 「交尾はできるけど、妊娠できないようにするんですか?」 やりチンまりさにするのだろうか。 「まさにその通りだよ」 「でも、それなら虚勢手術もしちゃえばいいのでは?なぜ避妊手術だけを?」 子供がいらないなら、両方処置しておけばいいのに。 「ゆっくりは母体をすると危険だろ?」 「そうですね。若かったり、体力が落ちてたら死にますよね」 一時期、無理矢理交尾させて殺すことがマイブームになったのでよく知っていた。 この成まりさくらい大きければ耐えられるが、あまり一度に回数をこなすと栄養失調なのか、黒ずんで朽ち果ててしまう。 「だから野生のゆっくりに襲われたときに備えて、避妊手術するんだ」 「はい」 「でも、飼い主さんの中には可愛がってるゆっくりの赤ちゃんが見たい人もいるわけだ」 「そうでしょうね」 「そんなときは、適当な母体を捕まえて自分のゆっくりと交尾させるんだよ。母体にはなれないけど、交尾はできるから」 「ああ、なるほど」 飼い主のエゴにも思えるが、所詮ゆっくりなので同情もしない。 殺されるにしろ、可愛がられるにしろ、人間を喜ばせるだけの道具なのだから。 「ゆ!まりさに何をする気なの!?」 交わされる会話から恐怖を感じたのだろう。 動けない成まりさが顔を青くしている。 先生はそんな成まりさの目の前に、箱を置いた。 「これが、手術器具だよ」 箱から出てきたのは、先端が尖った鉄の棒。 長さは30センチメートルほどしかないが、太さは小学生の腕ほどもある。 俺は思わず唾を飲み込んだ。 「では、さっそく始めようか」 「はい、先生」 つづく。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1442.html
「幽々子さまー、ただいま戻りましたー」 静かな日本邸宅に少女の声が響く。 ここは白玉楼。冥界の大食いお嬢こと、西行寺幽々子の住処だ。 で、買い物籠をぶら下げた少女は魂魄妖夢。ここ、白玉楼の庭師である。 庭師兼剣術指南役兼主婦、とも言う。 「幽々子さまー、どこですかー。おやつを買ってきましたよー」 超☆広い白玉楼だが、「おやつ」の声を聞けば幽々子はすぐに現れる…普段は。 「幽々子さまー、どこですかー?今日は新商品のぬーぼーって言うお菓子ですよー?」 ここまで言って妖夢は首をかしげる。 「おかしいなあ。いつもなら『ただいま』の時点で飛んでくるのに。お昼寝中なのかな?」 そんな妖夢の背後に忍び寄る一つの影。妖夢は気付かない! 影はふわふわと近づいていき、白魚のような指で妖夢のうなじをつついっ、と撫でた。 「ひゃあっ?!」 あられもない声を上げて、買い物籠を放り出してその場にへたり込む。 顔を真っ赤にして振り返ると、そこには… 「幽々子さま!」 お察しの通り、幽々子が立って、いや、浮いていた。 右手に持った扇子で口元を隠すお得意のポーズで笑っている。 「私の気配に気付けないなんて、まだまだね、妖夢。そんなことだから鬼に未熟者なんていわれるのよ?」 「うう、不覚です…。でも幽々子さま、みょんなところ触らないでくださ…ん?」 言いかけて気付く。幽々子に抱かれたドマンジュウ。ゆっくりとよばれる変な生き物?だ。 だが、妖夢はゆっくりを見るのははじめてだった。さしものゆっくりも冥界までは来れないのだろう。 死んでもゆっくりにまた転生するし。 「これが…ゆっくり…私に似てますね。」 このゆっくりはゆっくりようむ。妖夢に似てるから、ゆっくり妖夢。安易と言えば安易なネーミングである。 「ええ。妖夢そっくりでしょう?さっき紫が来て『面白いもの見つけたから』って置いて行ったのよ。」 「…あの方は…」 いつも寝てばかりいるくせに、こういう悪戯は好きなんだから、と頭を抱えた。 「幽々子さま、それ、どうするつもりですか?」 「んー、そうね、とりあえずお茶にしようかしら?」 「幽々子さま、きいてまs」 「ちーんぽっ!」 突然ゆっくりが叫んだ。 「ん゛なっ?!」 顔を真っ赤にして絶句する妖夢。 「あらあら」 例のポーズで微笑む幽々子。 「ちーんぽっ!」 もっかい叫ぶゆっくりようむ。 「ちーんぽっ!!!」 さらに大きな声で叫ぶゆっくりようむ。視線はさっき妖夢が落とした買い物籠から覗く野菜に向けられている。 どうやらお腹が空いているらしい、が、妖夢と幽々子はそんなことには気付いていなかった。 「幽々子さま…」 俯いて肩をプルプル震わせながら、搾り出すように声を出す。 「その卑猥な言葉を発する物体を、どうなさるおつもりですか?」 「んー、妖夢はどうしたい?」 涙目になりながら、きっと幽々子を見つめる。 「刀の錆にしたいです!!」 自分と似た顔をした物体が卑猥な言葉を発するのに耐え切れないのだろう。妖夢、乙女である。 「だめよ」 さっくり断られる。 「何故ですか?!」 「この程度のことで平静を失うようでは、まだまだよ。妖夢、刀のように冷えた心を持ちなさい。その修行のために、このゆっくりは白玉楼に置きます」 きっぱり言い切る。真面目な事を言っているようだが、扇子で隠した口元はしっかり笑っている。からかって楽しんでいるのだ。 「幽々子さま、楽しんでません?」 ちょっと考え込んだ妖夢だが、主人の意図をあっさり見破った。もっともらしいことを言ってからかうのは日常茶飯事なのだ。 「あら、もう気がついたの?」 つまらなそうに言う。 「幽々子さまが扇子で口元を隠して何かおっしゃるときは大抵楽しんでいるときですから。」 幽々子はお手上げ、のポーズを取った。 ゆっくりが床に落ちて「ゆっ!!」と抗議の声を上げたが、二人とも聞いていない。 「妖夢ったら、昔はもっと素直で可愛らしかったのに、変な知恵をつけて…」 よよよ、と下手な泣き真似をする。 「それはもう、幽々子さまと紫さまに鍛えられましたから。」 暇な幽々子と、人の悪い紫にとって、素直な妖夢はいいおもちゃだ。毎日のようにからかわれていれば少しは慣れるだろう。 「素直で可愛かった頃の妖夢はもういない…悲しいわ…」 下手なお芝居はまだ続いている。 「幽々子さま…お芝居はもういいですから、お茶にしましょう。今日は新商品の…?!」 言いながら買い物籠を見た妖夢の顔が凍った。 ゆっくりが籠に顔を突っ込んでむーしゃむーしゃしていたからだ。 「…」 幽々子の笑顔も凍った。幽々子にとって、おやつはご飯の次に大事なものなのだ。 あわてて妖夢が籠からゆっくりを引っこ抜く。 「ちーんぽっ?!」 食事の邪魔をされたゆっくりが抗議の声を上げる。食べかすが飛び散る。新商品、ぬーぼーの食べかすが。 「…あ。新商品…」 妖夢はそっと、幽々子の顔を見る。笑顔だ。笑顔のままだ。 「あ、あのー?幽々子さま…?」 おそるおそる呼びかけても反応はない。もう一度呼びかける。 「幽々子さまー…?」 幽々子は笑顔のまま扇子をどこからともなくもう一本取り出しす。 死に誘う程度の能力。本気で切れたらしい。たかがお菓子で、と思うなかれ。幽々子にとっては命よりも大切なものなのだ。 「ゆ、幽々子さまっ?!」 切迫した声で叫ぶ。下手をしたら自分まで巻き込まれるのだから当然だ。慌てて傍の部屋に逃げ込む。それでも足りずに押し入れに飛び込む。 …布団に頭を突っ込んで震えることしばし。 「妖夢ー?」 幽々子の呼ぶ声が聞こえたので、恐る恐る出て行くと、そこには… 「…あれ?生きてる?」 元気にお菓子をむーしゃむーしゃするゆっくりの姿があった。 「幽々子さま、殺さなかったのですか?」 んー、と幽々子は首を捻る。 「確かに殺したはずだったんだけど…何故か死なないみたいなのよ」 しばし考え込んだようだが、幽々子は「ま、いいでしょ」と呟いた。 「よく考えたら、あっさり死に誘ってはつまらない。死んだら苦しみも感じない。残酷に苦しんでもらいましょう。ね、妖夢?」 いい笑顔で恐ろしいことを言い切った。 「は、はあ…」 いくら何でも自分と似た顔のものがなぶられのは見たくないなー、と思った。しかし。 「ちーんぽっ!おなかいっぱいだよ!おねーさんたち、ゆっくりできるひと?ちーんぽ!」 とか言って擦り寄ってくるのを見て、一瞬でその考えは吹き飛んだ。 「殺りましょう、幽々子さま」 リボンを掴み上げて言う。あ、こいつのリボン、私のと完全に同じだ、と気がつく。余計に怒りを煽る。 「ちーんぽっ!おろしてくれないとゆっくりできないよ!!!」 二人で顔を見合わせる。 「だそうですが。」 「そうね。とりあえず黙らせて」 「わかりました」 言うが早いか抜くが早いか。楼観剣でゆっくりの舌は細切りにされた。 「…!!!!?!」 悲鳴を上げようにもあげられないゆっくり。ただ涙だけが一気にこぼれた。 「何か言いたそうにしてるわよ?」 「どうせまた、ち…えっと、卑猥な言葉を言おうとしたんでしょう。」 「妖夢、今何か言いかけなかった?」 「気のせいです」 「そうかしら?」 「気のせいです!!」 などと和やかな会話をしながら庭に降り、ゆっくりを目の前にある池に放り込む。 「??!!?!!」 「妖夢、私のやりたいことがよくわかったわね。」 「それはもう、長いことお仕えしてますから」 「まあ、うれしいわ…よよよ」 「…そんな泣き真似はやめてください…」 「?!!??!」 必死で這い上がろうとするゆっくりを10フィート棒で池に叩き落しながら話し続ける。 ゆっくりの方を見なくても的確に押し返したり沈めたりできるのはさすが妖夢といったところ。 地面にたどり着いては足?払いで叩き落され、浮かび上がったと思ったら池の底まで沈められる。 水面に顔を出せば目を突かれる、水中に逃げては呼吸が出来ない。涙と鼻水と池の水がごっちゃになる。 ゆっくりの顔がだんだん紫に染まって行く。 「………」 ゆっくりの意識が途切れるその瞬間を見計らったように、網で掬い上げられる。 「?!!?!!!」 息も絶え絶え、抗議しようにも声がだせないゆっくり。 「あらら、こんなに唇が紫になって。寒かったのかしら?」 「顔全体も紫ですが。きっと寒かったのでしょう。ちょうど焚き火がありますから、暖まってもらいましょう」 言うや否や、いつの間にか用意されていた焚き火の中に放り込まれた。 「!!!?!」 熱い。もちろん熱い。 しかし火の中から逃げ出そうとするたび、10フィート棒でおし戻される。 「!!!?!?!」 繰り返すことしばし。辺りに焼き饅頭の匂いが漂い出した。 「いい匂いねえ、妖夢」 「確かにいい匂いですが、食欲は湧きません…」 「人里じゃ食べるらしいわよ?」 「自分と同じ顔してるものは食べたくないです。」 「それが人情かしらね」 叩かれても叩かれても熱さに暴れるゆっくり。ゆっくりが暴れまわったせいで火は消えた。 だが、二人の胸に宿った怒りの炎はまだ消えていなかった。 「レア、くらいかしら」 「タタキじゃないですか。殴りましたし」 「どちらにせよ、次は食べやすい大きさに、ね。」 火傷で息も出来ないゆっくりの前に妖夢が立つ。刀の柄に手を掛けた。 空気を切り裂く音のみが聞こえ、餡子のついた刀を懐紙で拭いをかける。 ゆっくりを襲っていた火傷の痛みが治まる。 「♪………!!?!」 ほっとしたのも束の間、全身を皮を剥がれたかのような痛みが襲う。 妖夢が器用に皮だけを切り落としたのだ。 「…ちょっと気持ち悪いですね。」 「そうかしら。おいしそうに見えるけど?」 痛みで動くことも出来ないゆっくりの目に、自分に向かって手を伸ばす幽々子の姿が映る。 ぱくっ。 皮を切られた痛みに、さらに食いちぎられた痛みが加わる。 ゆっくりは発狂寸前だった。あまりの痛みに気絶しても、すぐに新たな痛みで強制的に目を覚まされる。 声も上げられない、涙ももう蒸発して枯れ果てた。身動きも、逃げることすらできない。 一口、一口食べられるたびに痛みは増していく。しかし、それと同時に、意識も薄くなっていった。 ゆっくりには死だけが救いだった。しかし、幽々子は味わうように、少しづつ食べていく。 30分後、餡を半分食べられたとき、ゆっくりはようやく死ねた。 「ふう、ごちそうさま」 「幽々子さま。口元に餡子が…それにしても…」 幽々子のために懐紙を渡しながら妖夢はため息を吐いた。 「いくら怒ったとはいえ、恐ろしい殺し方をしてしまいました…」 幽々子はまじめな顔になって妖夢を諭す。 「そうよ。怒りは人の心を曇らせる。妖夢、刀のように冷たい平常心を保ちなさい。」 妖夢も真剣な顔で答える。 「はい、怒りとは恐ろしいものです。身にしみました」 「ところで妖夢、今の私には怒りより恐ろしいものがあるんだけど、わかるかしら?」 どこからともなく扇子を取り出し、口元に当てて微笑む幽々子。 「…それは恐ろしいものではなく、怖いものではないのですか?」 ため息とともに答える妖夢。 「すぐにお茶をお持ちします。少々お待ちください。」 「お茶請けは戸棚のお煎餅がいいわ」 「はいはい」 ちなみにその日、白玉楼は晩御飯抜きだった。ゆっくりを虐めるのに時間をかけすぎてもう一度買い物に行く時間がなかったためだ。 ゆっくりを虐めた結果がこれだよ!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/863.html
緑に彩られた日光が木々の隙間に差し込み、人の足に汚されていない苔むした地面に恵みを与える。 鬱蒼とした森に風が吹き、隣り合う葉が擦れ合い、ざわざわと喧騒の音を立てる 暗い大気に柱の如く天上から貫く光が間隙を縫う。森が立てる声に釣られるように、 地から無数の影が姿を見せ、日光を浴びて木々と共に騒ぎ出した。 「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 ゆっくり姫 ここはもはや忘れ去られた地。幻想の彼方の、そのさらに奥に、余人を立ち入れずひっそりと暮らす小さな集落があった。 かつて人の世に起きた争いに敗れ、安寧を求めて旅立った人間の子孫が暮らしている。 村の男たちは狩猟により糧を得、女たちは男たちの居らぬ間に家と村を守る。 村を囲む森に住み着いたゆっくりと呼ばれる饅頭 -貿易のために諸国を旅する商人が立ち寄った際にその正体を聞かされた謎の生き物- は、町の近傍に棲むものと違い、無闇と村に近づかず、森で狩人に出会っても声一つ立てずに姿を藪の中に消す。 人とゆっくりの違いを知り、また人の力を知るがゆえに、森のゆっくりは野生に生きることを選んだのだ。 当然それまでに数年の月日と幾万の殺戮があったわけだが。 ゆっくりが現れてから村は少しだけ活気を増した。 獣を狩る術に長けた男達は容易くゆっくりを捕らえ,行商人に売りつけたり 乾燥させたゆっくりを得がたい甘味の補充に充て,または樹液に浸して固め女達の 身を飾る装飾品とするのだ(ゆっくりイヤリング・ゆっくり数珠etc)。 そんな村に起こる難事など、年に片手で数えうる小さな問題でしかなかった。 まして、ゆっくりが人に被害を成す話など、赤子の寝物語に等しいものだった。 そんな村に、この日、考えもしない大事件が起こった。 ゆっくり達の声が異常に騒いでいる。捕食種とされるれみりゃやふらんに襲われたときよりもずっと。それは群れへの警告ではなく,純然とした恐怖による叫びだ。餡子の詰まった中身でも本能は雄弁に,それがどれだけ恐ろしいものかを告げるのだろうか。 森の奥深くから,白靄を払い,押しのけ,それは強引に進んできた。 黒い何かうじゅるうじゅると身を這っている。地に落ち,草花を腐らせ黒い沁みを残してそれはゆっくりと村に近づいていた。 森に棲むゆっくりの殆どはそれに踏み潰されていた。それの速度はゆっくりのその名に等しい歩みなど比にもならず,逃げ惑い絶叫するゆっくりどもをぶちゅり,ぶちゅりと物言わぬ黒ずんだ餡子の屑へと変えた。 しかし,それだけでは済まなかった。潰され,黒い触手のようなものに触れたゆっくりは融けるように短い声を発し,『それ』の身体を覆う得体の知れぬ何かに混じっていく。 『それ』はゆっくりの餡子を身に纏っているのだ。 いつの間にか,絶叫は消えた。ただ這いずる『それ』だけが木々をなぎ倒し村へと走り去っていった。 その村の中を,トナカイのような獣に跨り森の方へと駆けゆく男の姿。 目鼻立ち良く、背もすらりと伸びた姿はなかなかの美丈夫であるが、 長老たち老人一同からは好ましくは思われていなかった。 彼こそは、都に生まれたならば必ずや後世に名を遺しただろう、 いわゆる虐待お兄さん,である。 都ならば珍しくもないが,自然に隔離された集落ではその存在は稀有である。 生まれながらにしてゆっくりの死骸を両手に握りつぶしたまま産声を上げたと云われる 虐待の権化とさえ呼ばれることもあった。 ゆっくりを獣とみなし、森と自然の一部として畏敬する村の習慣を破り、森に出ては人知れずゆっくり知れず、 ゆっくりを狩り殺している。大人たちは所詮ゆっくりのこと故,声を荒げるようなこともない。また,青年の弓の腕前は村随一であった。およそ三町(300m)の距離にあるゆっくりを一打ちで7匹,すべて眼球を撃ち抜いたほどのものである。 青年の名はアシタカ。いづれは村長(むらおさ)の嫡子として長の座に着かねばならぬ身だが、そんな自覚などどこ吹く風で 今日も物置のゆっくりを補充すべく、厩舎に繋ぐヤックルと呼ぶ赤獅子にまたがって森へと駆けていった。 その姿を乙女たちがやや頬を赤らめて見送る。 いつの世もどこにいっても,イケメンは得をする。 垣根を伝い,ヤックルを駆る内にアシタカの前方から籠を背負う乙女の一団に向き合った。 「あにさま!」 一人の乙女が声をかけた。アシタカの妹である。 「ちょうどよかった。ひぃ様が皆村にもどれと。」 アシタカは村を出る前に司祭を務める老婆からの伝言を伝えた。 「じぃじもそう言うの。」 「じぃじが?」 村の重鎮である老人がそういうのならば,何かしら異変が起きようとしているのではないか? ゆっくり狩りに懸想していたアシタカの楽しみは打ち切られたが,異変ならば仕方もあるまい。 「山がおかしいって。」 「鳥達が居ないの」 「獣達も」 「ゆっくりも!」 ゆっくりが居ない?例え姿を隠したとしてもあの騒々しい声が消えるとは…? 「そうか…じぃじの元へ行ってみよう。みなは村に帰りなさい。」 アシタカは乙女達を村に急がせ,自分はヤックルを森の方角へと急がせた。 村より離れ,森の入り口に立つ見張り台。その上にいるじぃじの元へアシタカは向かった。 じぃじは異様な気配を森から感じ,近づいている悪寒に注目していた。 アシタカが見張り台を駆け上がるとき,既に『それ』の気配は入り口にまで達していた。「じぃじ,あれはなんだろう?」 「わからん。人ではない。」 「村ではひぃ様が皆を呼び戻している…」 「きおった!!」 じぃじが鋭く叫んだ。同時にアシタカは背の弓を構え弓をつがえる。 森の入り口が暗く曇った。その光景はなんともおぞましいものであった。 樹が瞬く間に枯れ落ち,黒い触手がうねうねと這い回りながら飛び出てきた。 巨大な,まん丸なものが光る一対の瞳を村へと向け,森から這い出てきた。 それが通り過ぎた後は抉る様に草が枯れ果ててていた。 「タタリガミだ!!!!」 じぃじが絶叫した。 タタリガミと呼ばれたそれが森の影から這い出んとしたとき,黒い触手が日の光を嫌うようにそれの身体から剥がれた。 その姿にアシタカは息を呑む。 見たことのある.いや彼には日常に馴染みあるその形。帽子を無くしているも,泥と餡子に塗れようと,金色の髪を逆立て,憤怒の相で突き進む姿は,ゆっくりのものであった。都の辺りに住まうという,ゆっくりまりさの巨大種,ドスまりさの姿である。 一度は剥がれた黒い触手は,再びドスまりさの身体を包み込み,黒い塊となって村への直進を止めようとはしない。その方向には見張り台があり,下にはヤックルがいた。 ヤックルはあまりの恐怖に身が竦んでしまい,アシタカの声も聞こえない。 アシタカはつがえた矢をドスまりさではなくヤックルの足元へ放った。 風を切る感触に正気を取り戻したヤックルがすんでのところで触手から逃れた。 ドスまりさは全力で見張り台に体当たりし,崩れ落ちる台の上であやうくアシタカはじぃじを抱きかかえて飛び移った。 怯むことなくさらなる直進を続けるドスまりさは真紅に鈍く光る眼をただ村にのみ向けている。 このままでは村が危ない。アシタカはじぃじを置いて自分も駆け出した。 「アシタカー!タタリガミには手を出すな!呪いをもらうぞ!」 じぃじの呼びかけを無視し,ヤックルに飛び乗ってドスまりさを追う。 ドスまりさの進行を遮るように前に出たアシタカはドスまりさを鎮めようとした。 「鎮まりたまえ!鎮まりたまえ!名のあるゆっくりの主と見受けたが,何故そのように荒ぶるのか!」 まさか自分が虐待したゆっくりの仇討ちにでも来たのか?とアシタカは邪推したが,ドスはお構いなしに走り続ける。鬼気迫る,を通り越して凄まじい悪意を込めてドスは村を目指している。 そこに,先程アシタカが出会った乙女達が居た。ドスまりさは乙女達に気づき,進行を変えた。 これはいけない,と乙女達は逃げ出し,アシタカはさらに呼びかけを続けるもまったく通用しない。そのうち,乙女の一人が足がもつれて転んでしまった。覚悟を決め,短刀を抜き払うが,そこに,併走してヤックルの上から,アシタカは弓を引き絞った。 瞬間。放たれた矢は正確に眼と思しき部位に命中した。 跳ね回る触手。暫しドスまりさの動きが止まった。その隙に乙女達は体制を整えた。 触手は天を仰ぐように暴れ回り,いくつかの奔流と化してアシタカの方に伸びてきた。 一部が,アシタカの右腕に絡みつき,力いっぱいアシタカはそれをちぎり取った。 第二の弓をつがえ,触手が剥がれて剥き出したドスまりさの脳天に,矢が突き立たる。 もはやドスまりさに力は潰えた。奔流はべたりと落ち,大地に穢れた澱みを残した。 ドスまりさの身体がぐらりと傾ぎ,横転する。 アシタカは,掴まれた右腕に燃やされるような激痛を覚えていた。濃硫酸を浴びせられたように煙を立てて蒸発する触手の一部に腕をどうにかされたのあろうか。 と,そこに村の一団が迫ってきた。火を焚き襲撃に備えていた彼らはドスまりさが倒れたことを確認するとアシタカに元に駆け寄った。 ヤックルから降りたアシタカは激痛にうめきながら,皆が近づくのを拒んだ。 「触れるな…!これはただの傷ではない!」 一人の村人におぶさり,祭司たるひぃ様がやってきた。 「みんな,それ以上近づくでないよ!」 ひぃ様は瓢箪から水を注ぎ,アシタカに腕にかけた。さらに激痛が走り,必死に耐えるアシタカ。 ひぃ様は倒れたままぴくりともしないドスまりさに近づいた。深く一礼し,語りかける。「いづこよりいまし荒ぶるゆっくりとは存ぜぬも,かしこみかしこみ申す…。 この地に塚を築き,貴方の御霊を御祭りします。恨みを忘れ,鎮まり給え…。」 しかし,ドスまりさは光を無くした虚ろな瞳を向けて呪詛を吐いた。 「うぎぎぎぎぎぃぃ…ぎぎ…汚らわしい人間どもめ…!!我が苦しみと憎しみを知るがいい…!」 ドスまりさの身体は,途端に腐敗を始め,皮だけになり餡子をぶちまけて死んだ。 餡子の臭気が辺りに拡がる。凄まじい悪臭である。 その晩のこと。 貴重な灯油に明かりを燈し,村の重鎮たる者が合議の間に残らず集結した。 居並ぶ姿には沈黙のみ。老人達の視線は,中央に座すアシタカとひぃ様に向けられている。 ひぃ様は,占いを執り行っている。余人には知れぬ不思議な文様の布に,幾つかの石と,木切れ,獣の骨,凄まじい形相で凝り固まった琥珀ゆっくりの欠片を無造作に投げ, その吉兆を何やら伺っていた。 ぱちぱちと空気に弾ける火の粉の音に,やがてひぃ様の口が重く開いた。 「さて,困ったことになった。これは厄介なことだよ。かのゆっくりは,遥か西の国からやってきた。村より遠く,西の都からだよ。 深手の毒に気が触れ,身体は腐り,ゆっくりにあるまじき走りに走り,呪いを集め, タタリガミになってしまったんだ。 それほどの強い憎悪に支えられ,1頭のドスまりさが棲んでいた森を離れてここまでやってきたんだ。」 「アシタカヒコや。皆に,右腕を見せてやりなさい。」 頷いて,沈黙を保ったままアシタカは包帯を巻いた右腕を,ゆっくりと布を解き,居並ぶ老人の視線に差し出した。老人達はわずかに身を乗り出し,くぐもった苦鳴をもらした。 握りしめられた拳からやや上,黒ずんだドスまりさに咬まれた付近から,赤茶色の痣が 拡がっていた。 ゆっくりと吐き出された餡子がこびり付き,拭こうとも洗おうとも取れないのだ。 「ひい様…!これは…!」 「アシタカヒコや。お前には自分の運命を見定める覚悟があるかい。」 「はい。あのゆっくりに矢を射るとき,覚悟を決めました。」 「その餡子はそなたの肉に食い込み,骨まで腐らせる。やがてそなたを殺すだろう。」 ひぃ様のすべてをぶち壊すような宣言に,たまらず一人が叫んだ。 「どうにかならぬのですか!?このような,村をまとめる若者が」 「アシタカは村を守り,乙女達を守ったのですぞ!」 「ただ死を待つしかないのは…」 老人達の嘆きは次々と叫びとなった。かつて村にゆっくりが現れた当初,畑や森を荒らされ苦しめられた記憶を思い出していた。やがて静まるまでにどれだけ被害が出たか。 今,村長を継ぐべき青年がゆっくりの呪いに取り殺されようとは。 悔しさが怒涛のように渦巻いてゆく。 「誰にも定めを変えることはできない。 ただ,待つか自ら赴くかは決められる。見なさい。」 ひぃ様が何かを取り出し,ごろりと転がした。 鉄のようなそれは,丸い塊で,占いに用いる琥珀のゆっくりに劣らぬ苦痛の表情を浮かべていた。確かにそれはゆっくりである。しかし,その表皮のみならず中身までもが異常な硬度と重量を備えている。 「あのゆっくりの身体に食い込んでいたものだよ。骨を砕き,はらわた(餡子)を引き裂き,むごい苦しみを与えたのだ。」 アシタカの顔面に少しだけ興味の色が浮かんだ。虐待お兄さんとしては当然の反応かも知れぬが,明らかに場にそぐわなかった。誰も突っ込まないが。 「さもなくばゆっくりがタタリガミなぞになろうか。 西の国で何か不吉なことが起こっているんだよ。その地に赴き,曇りのない眼で物事を見定めるなら,あるいはその呪いを絶つ道が見つかるかもしれん。」 老人の一人が口を開いた。 「ゆっくりの戦に破れ,この地に潜んでから500猶予年。今やゆっくりにかつての勢いはない。(虐待の)将軍どものやる気も折れたと聞く…。だが我が一族の血も衰えた。 このようなときに,虐待の長となるべき若者が西へ旅立つのは定めかもしれん。」 アシタカは,短刀を取り出すと己の髪に当て,すぱりと髷を落とした。 老人が瞼を押さえる。色々と情けなくて泣き出したのだ。 「掟に従い見送らん。健やかにあれ。」 アシタカは一礼し,旅の準備を整えるべく祭殿を離れた。 ヤックルと共に,静まり返った村を横ぎるアシタカの元に,一人の少女が駆け寄った. 「あにさま!」 「カヤ!見送りは禁じられている!」 「お仕置きは受けます!どうか,これを私の代わりにお供させてください!」 少女が差し出したのは,光る石より作られた小さな小さな小刀であった。ゆっくりの形相が描かれている。否,ゆっくりが埋め込まれているのだ。 「大切な玉の小刀じゃないか!」 「お守りするようゆっくりを埋め込みました!いつもいつも,カヤはあにさまを想っています!きっと…!きっと!」 「私もだ。いつもカヤを想おう。」 アシタカはヤックルを駆り,真っ直ぐ村を離れた。 壮大な森の景色に,やがて朝日が光を撒く。 道なき道を駆け,餌を取りに降りてきたゆっくりを叫ぶ間もなく踏み潰し,餡子溜まりの中を西へと急ぐ。 ゆっくり姫 第一 続く こんにちは あるいはこんばんは もしくはおはようございます ごめんなさい。 VXの人です。 もののけ姫のパロともなんともいえないものを書いてみました。 虐待?でしょうか?なんでしょうか。 僕は疲れています。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3590.html
*警告* 現代物です。 ゆっくりは何も悪いことをしていませんが、ゆっくりできません。 80字改行です。その辺案配していただけると読みやすいです。 ↓以下本文 「ゆっしょ! ゆっしょ!」 「おかーしゃん、ゆっくちがんばってね!」 路地裏で事業者ゴミの袋がガサガサと音を立てていた。バスケットボール大のゆっくり れいむが袋にかじりつき、まんじゅうボディをもにゅんもにゅんとくねらせ、不気味な踊 りを披露している。まわりでは何匹ものテニスボール大の子れいむが騒ぎながら、ぽいん ぽいんと跳ねている。手足のないゆっくりではかたく縛られたゴミ袋の口をほどくことは できない。中身にありつくためには、決して容易いことではないが自治体指定のゴミ袋を なんとしてでも食い破る必要があった。 「ちっ、野良ゆっくりかよ……ウッゼぇ」 そこへ見事にでくわしたのが、休憩時間に一服つこうと出てきた店の若い者。露骨に顔を しかめてタバコをポケットにねじ込むと、ゴミ袋に夢中で彼に気付かない親れいむのこめ かみに、つっかけを深々とめり込ませた。 「ゆ゙ぼっ?!」 「おー、柔らけぇ」 白目をまん丸に剥いたまま、電信柱と情熱的な抱擁を交わす親れいむ。ごちそうまであと 一息というところで吹き飛んだ親れいむに、子れいむも仲良く一斉にゆがーんと白目で硬 直。ゆっくりは突然のゆっくりできない事態が認識できず、白目を剥いて固まってしまう 性質がある。そして、再起動までには若者がポリ袋を取って戻ってくる時間はゆうにあっ た。彼は、応援していた位置そのままに一列に並んだままで固まっている子れいむを手づ かみで次々に袋に放り込んでいく。向かいの電柱とめり込むほど親交を深めている親れい むのもみあげを掴んで引き剥がすと、ゆっゆっと楽しい顔で痙攣している不思議まんじゅ うをしばし眺めた。下膨れの顔は電柱との不本意な接近遭遇によって、平べったく潰れて 赤く跡がつき、器用にも目をぐるぐる模様にして目を回していた。 「でけぇ。二袋いるか」 若者は親れいむを別の袋に放り込んで口を縛って放り出すと、放り込まれた衝撃で気が付 いたのか、中で子れいむがはね回りはじめたもう一つの袋の口も手早く結ぶ。きちんと縛 っておかなければ、潰したときに中身のあんこが漏れて、地面が汚れてしまう。ゴミを撒 き散らすのダメ、ゼッタイ。 「めんどくせえなあ。昨日だったら燃えるゴミの日だったのによう」 彼は袋の中で寄り集まり、口々にゆっくりしていってね! と鳴き声をあげる子ゆっくり を睨み付ける。歩いていて、まだ火のついているたばこが落ちていたらとりあえず踏み消 すようなもの。都市部の野良ゆっくりの扱いは、その程度だった。 やれやれ、と息をつくと若者はまずは潰すのも楽な子ゆっくり袋に足を向けた。 「ゆっくちちていってね!」 これから自分たちに起きることを理解していない子ゆっくりは、若者を見上げて鳴き声 をあげる。ゆっくり間であればとてもゆっくりできる挨拶も、しかして人間相手には何の 感慨ももたらすことはない。当然帰ってくるはずのゆっくりしていってね、の代わりに、 子れいむに返されたのは、硬質ゴムの靴底であった。子れいむは不思議そうな顔のまま、 中身を全て押し出されて平たくなった。 「ゆ゙ぎゃああああ?!」 若者が面倒そうに靴底をぐじぐじと捻ると、僅かに残されたあんこで断末魔の痙攣をして いた子れいむの皮も破れてあんこと混ざり合い、髪も飾りも混ざって、一息のうちに餡塊 となった。ここにきてやっとゆっくり姉妹も自分たちの運命に気付き、ポリ袋の中で跳ね 回りはじめる。しかし、どれだけ必死に逃げ回ろうとも、ポリ袋は透明で外が透けて見え ても逃げ場はなく、口もきつく結ばれて逃れることはできない。 「にんげんさん! ゆっくりやめてね! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「ゆゆっ! なんにもないのにひっかかってにげられないよ!」 砂糖水と餡子で滑る袋の中、一番小さな子れいむがぽてりとひっくり返る。若者はこれ幸 いと、無防備な底を晒して動けなくなっている子れいむを踏みつける。 「なかみだしちゃだめだよ! ゆっくりがんばってね!」 「みんにゃでたしゅけるよ!」 「ゆ゙……ゆ゙ぶ、ゆ゙ぼ……!」 圧迫されて飛び出しそうなあんこを、必死に目をつむり、口をつぐんで押しとどめようと する子れいむ。妹を救おうと、姉妹は若者の足にぽにゅんぽにゅんと体当たりをはじめた り、靴底を押し上げようとするものの、内圧で薄くなった皮は姉妹の目の前でぱぁんと爆 ぜ、袋に盛大にあんこが飛び散った。 「ゆああああ?!」 「どうしてこんなことするのお!?」 「おかあしゃん! ゆっくりたすけてね!」」 「ゆゆっ?! おちびちゃん、いまたすけにゆべしっ!」 子れいむの悲鳴に通ずる物があったのか、目を回していた親れいむが柔らかまんじゅうボ ディを左右に振りながら飛び起きた。あんこで汚れたポリ袋と中で跳ね回る可愛い子れい むに気付き、勇躍飛び出すものの、親れいむもまた袋の中。一跳ねで盛大に顔面からアス ファルトと仲良くなることとなった。 「にんげんさん、ゆっくりやめてね!」 妹れいむをかばうように、年かさの子れいむがぷくぅと膨れて威嚇する。それが功を奏 してか、若者は足を止めた。もちろん、それはゆっくりの威嚇によるものではない。 「おはようございまっす」 「おう、お疲れ!」 足を止めて挨拶する若者に、えびす顔の男が片手を上げて勝手口へ入っていく。野良ゆっ くりの生死など、だれも気にもとめない。当然命乞いに耳を傾ける者もいない。姉れいむ は膨れたまま一息に踏み潰され、中のあんこを全て吐き出した。そのままにしていては、 生き残りがあんこを中に押し戻して蘇生させてしまう。若者は靴底で皮を踏みちぎり、飾 りと混ぜて妹思いの子れいむをきっちり、あんこの塊へと変えた。 「あの、すみません……」 震える子れいむを踏み付ける若者は、その声に足を止めた。肩越しに見やれば、若い娘 が先ほどの親れいむの袋を手にしていた。親れいむは袋の中で飛んだり跳ねたり、滂沱の 涙の砂糖水で滑って転んだり大騒ぎ。 「そのゆっくり、どうなさるんですか?」 「普通に潰して燃えるゴミですけどー」 「どぼじでそん゙な゙ことい゙うの゙お゙!」 袋の中でわめく燃えるゴミに構わず、若者は足に力を入れ、燃えるゴミを製造する。ごは んが足りなくても、がまんして妹に多めに食べさせていた姉れいむも、あっという間にあ んこ玉。袋の底があんこで埋まりはじめ、跳ねた拍子にあんこで滑ったその下の妹れいむ も、仲良く姉妹と混ざり合う。 「よろしければ、そのゆっくり頂けませんか」 「えぇえ、こんなのを?!」 「え、ええ」 驚いた若者は、思わずあんこに埋まる残骸を念入りにすりつぶしていた足を止め、顔をあ げて向き直る。おとなしそうな顔だちの娘は、恥ずかしそうに頷いた。このご時世、ゆっ くりが欲しければ、デパートでもスーパーでも、食品コーナーでいくらでも売っている。 ゆっくり加工品も、置いていないコンビニの方が珍しいくらい。上品そうな身なりの娘が 野良ゆっくりを何のために欲しがるというのだろうか。若者は呆気にとられ、娘をまじま じと見つめる。娘はバッグの紐をつまんで位置を直す。 「あちゃー、まさか野良ゆっくりなんざ欲しい人がいるとは思わなくて……ほとんど潰し ちまいましたよ。すいませんねえ」 「いえいえ、とんでもないことで。この大きいのだけでも頂いてよろしいかしら?」 「こんなんでよければいくらでも。はは、その辺這いずり回ってるおまんじゅうはさすが に喰えたもんじゃありませんからねえ」 「でいぶはたべものじゃないいい!」 若者はしゃがみ込んで、袋の中身をつっかけの先で蹴ってあんこを散らす。生き残りの一 匹も、姉妹を襲った残酷な運命にあんこを全て吐き出して永遠にゆっくりしていた。 「あちゃ、こっちは全部潰れてました。すいませんね」 「ではありがたく頂戴いたしますね」 「ええ、どうぞどうぞっと」 若者に頭を下げると、娘は親れいむの袋を提げて歩いていった。若者は袋の口をきつく縛 り直し、念入りにつっかけの底でまんじゅうの皮をすりつぶす。少しでも息があると、次 のゴミの日までゆっくりゆっくりうるさいから。 「やれやれ、野良ゆっくりなんざ欲しがる奇特な人がいたもんだ。あれか、おかしい人な のかね。綺麗なのにもったいねえなあ」 あんこで一杯のポリ袋をゴミ集積箱に放り込むと、若者は勝手口から戻っていった。結局 彼はゆっくりのせいでせっかくの休憩もほとんどゆっくりできなかった。 「ゆ゙っ、ゆ゙っ、でいぶのおちびぢゃんが……」 「さ、ついたわよ」 とさりと袋詰めを三和土に落とし、娘はだばだば砂糖水を垂れ流すれいむに微笑んだ。 「ゆゆ……ここはおねえさんのゆっくりぷれいす?」 「そうよ、わたしのおうち」 「れいむもゆっくりしたいよ……」 「でもあなた汚いわ。奇麗にしましょうね」 「ゆっ?!」 バッグとれいむを置いて、娘は手早く部屋着に着替えて戻ってくると、袋ごとれいむをお 風呂場に運ぶ。水温を軽く確かめ、れいむに頭からシャワーを浴びせる。 「ゆやああああ! みずさんはゆっくりできないよ!」 「だいじょうぶ、これは人間がとってもゆっくりできるものよ」 水流に怯え、白目を剥いて硬直するれいむに構わずたっぷり濡らすと、ゆっくり用シャン プーで泡まみれにしていく。 「あわあわあわあわ、いいにおい! くすぐったいよ!」 「いい子だからあばれないの」 ゆっくりの不思議まんじゅうボディは、お互いに舐めたりす~りす~りするだけで汚れが 取れるが、野良ではどうしても汚れや臭いが残るもの。でも、信頼のお兄さん印、鬼意製 薬のゆっくりシャンプーはガンコな汚れもこんなにすっきりー! 温かいシャワーで泡を流され、れいむはプルプルと水気を飛ばす。ゆっくりできない雨 とは違って、こんなにゆっくりできる温かな水は、野良ゆっくりのれいむには未知の存在 だった。 「こぉら、あばれちゃだめよ」 「ゆ、ゆっくりー!」 すすぎ終わってふわふわタオルで包まれ、野良のれいむは生まれて初めてのゆっくり体験 に、白玉の目玉を輝かせて歓喜のゆっくりを上げた。 「乾くまで少しおとなしくしてなさい」 「ゆっくりするよ!」 タオルでぐるぐる巻きにされ、端を洗濯ばさみで止められた塊がもごもごと声をあげる。 脱衣場にれいむ包みを置くと、娘は部屋着を放りだして、豊満な肢体を惜しげもなく晒し、 野良ゆっくりで汚れた手を、水の跳ねた身体を丁寧に洗い清めていく。文字でしかお見せ できないのが残念である。 「ふう、さっぱり」 「れいむもすっきり!」 湯上がりの娘は洗い髪を乾かしながら、れいむに一切れ、バウムクーヘンを切り分けた。 「むーしゃ、むーしゃ……しっ、しあわせーっ!?」 アスファルトを割って生える雑草やゴミ箱を荒らしてきた野良ゆっくりのれいむには、そ れは全く未体験の味だった。そのあまあまは、もはや暴力的と言っても過言ではなかった。 感動に打ち震えているれいむにもう一切れ、自分の皿にも一切れ切り分ける。カップを手 に取り、娘は紅茶の香りをしばし楽しむ。 「おねえさん……」 「なあに、もっとほしいの?」 「おちびちゃんたちもゆっくりさせてあげたかったよ……」 「そう、それはとても残念だったわね」 娘も長いまつげを伏せ、紅茶のカップをソーサーに戻す。かちり、と硬質な音がひどく酷 薄に響いた。 「そろそろ暗くなるわね。さ、おうちに帰りなさい?」 優しい声色はそのままに、娘はれいむを持ち上げた。柔らかな両手に挟まれ、れいむは目 を見開き、じたじたと暴れはじめた。一度体験したゆっくりを、はいそうですかと手放せ るゆっくりがいようはずもない。 「ゆっ、ゆゆっ! おねえさん! れいむもおねえさんのおうちでゆっくりしたいよ!」 「だぁめ。ここはわたしのおうち。あなたにはあなたのおうちがあるでしょう」 「おそとはゆっくりできないよ! れいむもゆっくりさせてね!」 その言葉に、娘はころころと鈴を転がすように笑う。震える手で挟まれたまま、れいむは 大量の疑問符を浮かべ、娘の顔を見上げる。 「ゆっ、ゆっ? おねえさん、どうしてわらってるの?」 「お外は寒いし、夜は怖いわね。人間はあなたたちをゴミとしか見ていないわ。野良犬も、 野良猫も、鼠も、鳥も、蟲も。何もかもがゆっくりできないでしょう。この世界のどこに 行こうと、あなたたちゆっくりのゆっくりプレイスなんて存在しないものね。でもダメ」 満面の笑みを浮かべる娘に、目の幅で涙を流し、もみあげをぴこぴこさせ、おりぼんをぴ るぴる動かし、れいむは可愛らしさを必死でアピールする。 「でいぶはゆっくりしてるよ! おうたもじょうずにうたえるよ! おねえざんのおうぢ で! ゆっくりざぜでぐだざいい!」 その言葉に、娘は手を離し、腕を組んで、頬に指をあてて首を傾げる。ぼてっ、と転げ落 ち、期待に目を輝かせるれいむ。屈むと重たげにたゆん、とする胸に飛びつこうとするれ いむを手の平で押しとどめ、娘はにっこり微笑んだ。 「あと七回お日様がのぼって、あと七回お日様が沈んだら、また今日みたいにお風呂で奇 麗にして、あまあまも食べさせて、ゆっくりさせてあげる」 「ゆ゙っ?!」 れいむを抱え、娘は薄ら寒い扉の外へ向かう。冬の風が娘の髪をひょうと煽る。夕暮れの 風の冷たさに、形の良い唇の端を釣り上げ、れいむの髪を撫でて微笑む。たった一撫で。 そのあとはコンクリートにれいむを置いて娘は踵を返す。 「寒いわね。明日は雨かしら。きっとずっとゆっくりできないわね」 「ゆ、ゆ、ゆ」 ぴしゃり、と扉が閉まる。れいむが何度体当たりしても、軋みさえしなかった。吹き抜け る冷たい風が、れいむのゆっくりを奪っていく。お風呂を知ってしまったら、水浴びのた びに思いだしてゆっくりできなくなることだろう。人間のお菓子の味を覚えたら、何を食 べてもゆっくりすることはないだろう。ふかふかのタオルの感触を思いだして、寝床でも ゆっくりすることはできないだろう。 「ゆっくりできないよ……おちびちゃん……まりさ……」 狩りへ行って二度と戻ってこなかったまりさとのゆっくりの証。ささやかなしあわせー、 を分かち合った可愛い子ゆっくりたちはもういない。冬の夕陽がアスファルトに影を投げ かける。やがて、丸い影が、ぽいん、ぽいんと力無く跳ねて路地裏へと消えていった。 書いた物リスト ゆっくりいじめ系464 森に魚を求める 紅魔館×ゆっくり系12 突発ゆっくり茶会 ゆっくりいじめ系540 ゆっくり水雷戦 その他 ゆっくりの手引き ゆっくりいじめ系1097 アストロン ゆっくりいじめ系1014 どすのせいたい ゆっくりいじめ系1907 品評会 ゆっくりいじめ系2137 朝の光景 ゆっくりいじめ小ネタ259 緩慢しんぼ 注 これは野良犬や野良猫への餌付けや、構って捨てる行為を推奨するものではありません。 フィクションのゆっくりと現実の動物を同一視しないでね! 虐待おねえさんとの約束だよ!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4603.html
「れいむのあかちゃんが生まれるよ!ゆっくり産まれてきてね!!」 「ゆゆ~ん!まりさとれいむのあかちゃん凄くゆっくりしてるね!」 実ゆっくりが震える。 ついに出産の時が来たのだ。 「生まれるよ!れいむの可愛い赤ちゃんがうまれるよ!」 「まりさの赤ちゃん!ゆっくりしてね!」 ポト。 最初に茎から落ちたのはれいむ種の赤ゆっくりだった。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」 パチっと目を開き大きな声で第一声を上げる赤れいむ。 そのゆっくりした姿に親れいむと親まりさは感動した。 「ゆゅーん!!れーみゅ ゆっくちうまりぇちぇ しゅごーくゆっきゅりしてるよ!」 楽しそうに跳ねる赤れいむ。 産まれてきた喜びを全身で表現しているのだ。 「ゆっくちちたら うんうんしゅるよ!ちゅっきりちゅるよ!」 ブリブリ。 ビチビチ。 ブショワー。 赤れいむからこんもりと山のように餡子が垂れる。 ついでに砂糖水も噴き出す。 「ゆがああああああ!?れいむのおチビちゃんが餡子を出しちゃったよ!?」 「餡子が出るとゆっくりできなくなるよ!おチビちゃんゆっくりしていってね!!」 その行動に親れいむと親まりさは大慌てになる。 しかし当の赤れいむは全く気にしていなかった。 「ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅっきりいいいいい!!!!もっちょ うんうんと ちーちーちて ちゅっきりちて ゆっきゅりだよ!!!」 ブリブリブリブリ………。 ブショー。 赤れいむは更に糞と尿をひねり出す。 「ゆあああ!!れいむの貴重なおチビちゃんがあああああ!!!」 「どぼじでぞんなごどじでるのおおおお!?」 「ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっきりいいいい!!!」 ブリブリとシーシーは止まらない。 ついに赤れいむは皮だけになってしまった。 「もっちょ…………ちゅっき…り……ちちゃかっ………た……………」 それが赤れいむの最期の言葉だった。 その後生まれてきた赤ゆっくり達もみな糞尿を撒き散らして死んでいった。 「どぼじでれいむのおチビちゃんがああああ!!!?」 「なんでゆっぐりじでぐれないのおおおお!?」 皮だけになった10匹の赤ゆっくりを見ながら2匹の親ゆっくりは絶望した。 だが絶望はこの2匹で終わることはなかった。 世界中のゆっくりがその日を境に究極の進化を遂げたのだ。 汚物ゆっくりとしての最終進化だ。 産まれた瞬間から糞尿を撒き散らす究極の生命。 それから間もなくゆっくり種は絶滅した。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1948.html
※人間がゆっくりに負ける描写を含んでいます。by管理人 どこまでも高い空は、眼にしみるような青に傾き始めた陽の橙を含ませて頭上にあった。男は両腕を天に上げ、大きく伸びをした。 午前のうちに畑仕事も含めた家事を済ませてしまったので、軽い昼寝を取ったのだが、目が覚めたら子供が家の中にいなかったので、外に出てみたのだった。 家から離れる時には必ず一声掛けるように言ってある。尻叩きの恐怖を乗り越えられるほどの反抗期には達してないから、恐らくは家周りの畑にいるに違いない。 多分虫の観察でもしているのだろう。死んでしまった妻に似て、好奇心が旺盛な息子だった。 「おーい、ぼぉずぅー」 天高く声を上げると、間をおいて「とぉちゃーん」と声が家の裏から聞こえてくる。案の定、だった。 くだんの場所に近づいていくと、子供とは別の声が混じってきた。小さくせわしない声が複数。何かを叫んでいるようだ。 裏の畑には茄子が生えている。去年はキャベツを植えた場所だ。なかなか良い生育を見せ、秋茄子も豊かに実っていた。 二ヶ月前に剪定したとはいえ、それなり背丈を林立させた茄子の間に、隠れるようにしゃがんでいる子供。可愛らしい背中が丸まっている。小さな声の群れは、その足下から飛び上がっていた。 「何やってる?」 のぞき込んでみると、小さなゆっくりが三匹。レイム種だ。 「いだいよぉおおおお!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおお!!」 「やべでぇえええぇえええ!!」 三者三様に定型文の悲鳴を上げている。 「えへへ~」 子供は得意げに父親を見上げてくる。男もにっこりと笑って応える。 「捕まえたのか」 「うん! えっとね、畑でね、荒らしてたからね、取ったの!」 横に眼を移すと、なるほど、朝の収穫を免れた小ぶりの茄子が食い散らかされている。ついでにもう一匹の子ゆっくりらしきものも散らかっている。 お手柄だなと、男は子供の頭を撫でた。子供は嬉しそうに歯を見せて、子ゆっくりを再びいたぶりに掛かる。 「「「びぎゃああああああ!!」」」 無邪気な笑顔を向けられて、子ゆっくりは絶望の三重奏を弾き始めた。当然だろう、今までされたこと、そしてこれからされることを思えば。 これからのことは簡単に推測できる。傍に未来の姿があるからだ。 先ほど「子ゆっくり『らしき』」と表現したのは、それが原型を判断しにくいほどにバラバラだったからである。 かなり念入りにちぎったようだ。泥に混じったあんこにくっついているものが赤いリボンの破片であると、かろうじて推定できる程度に。 恐らくは少しずつ少しずつ、端っこからむしっていったのだろう。叫び声が高くなりつつ、そしてある時点から弱くなりつつあるのを聞きながら。 目の前の惨劇に、他の子ゆっくりは逃げだそうとしただろう。しかし、できなかった。恐らく底面部をえぐられているからだ。 現に今も身体をおこりのように震わせるばかりで、寸分も移動していない。そして、お漏らしと思わしき液体と共に、接地面から餡が少量流れている。 ゆっくりのいたぶり方を心得ている我が子に、男は一種誇らしげになる。足に当たる部分を焼いたり、指でえぐったりして逃げないようにしておけば、安心して虐待を楽しめる。 「えいっ、えいっ」 「ゆ、ぎゃ、やべぶっ、ぷぎゅっ!!」 今、子供は子ゆっくりにデコピンをしている。何度も、執拗に。 たかが指の一撃一撃に過ぎないが、生まれたばかりの薄い皮にとっては、ハンマーに殴られることに等しい。 内部に対するダメージも相当だろうが、身体のところどころが欠けている。衝撃に耐えきれず、削りとられてしまったのだろう。 「もうやべでぇえええええ!!」 「なんでぞんなごどずるのぉおおおお!!」 徐々に欠損し、死に近づいていく姉だか妹だかを見て、叫ぶ他の二匹。その姿もやはり虫食いだらけになっている。(漫画のチーズみたいだna)と男は思う。(あ、眼が飛んだ) 「れ、れいぶのおべべがああぁあああ!!」 「べいぶぅううううう!!!」 「やべでええええぇえ、ゆっぐりやべでぇええ!!」 ちっぽけな身体でよくもここまで、と思えるほどの声を上げて子ゆっくりは叫ぶ。空気の震えが男の脊髄にまで届き、快感を生んだ。 子供は片目を失ったゆっくりに対して、その手を止めない。得た快感をさらに得るためだ。たわめられた指は、もう片方の眼に標的を移す。 「っゆ、ゆっくりやめっ、ゆっくりやめてね!!」 目の前に指を接近させられて、ぶるぶる身体を震わせて懇願するが、かえって子供の嗜虐心を高めさせることに気づかない。 「ゆっくりやめっぎがぁああああぁああ!!!?!」 黒く輝いた豆粒のような眼は、黒々とした餡の穴に変わった。そのゆっくりに映る世界も、永遠に黒一色となることが決定した。 とはいえ、苦悶が長く続くことはないだろう。陽が落ちる前に、その命は落日する。ゆっくりと、徐々に削り殺されて。 子供が今度は言葉を奪おうと、口に向かって指を向けた時だった。 「ゆっぐがあああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」 ものすごい剣幕の声が少し離れたところから飛び出してきた。茄子の枝々が激しく揺れ、地面から土埃が起こる。その現象が子供の方へ怒濤の勢いで迫っていた。緑の葉の間から、紅白のリボンが覗く 成体サイズのゆっくりだった。 レイム種。ほぼ間違いなく子ゆっくり達の親だろう。 「ゆっぐりじねぇえぇええええっ!!」 眼を血走らせ、歯をむき出しにして子供に飛びかかった。子供はその鬼人の形相にすくんでしまい、動けない。親ゆっくりの歯が子供の顔をとらえる、 「ぐぶぎゃぁああああああぁあああああ!!!」 その前に男の足が間に合った。 間一髪、飛び込んだ男の蹴りが、親ゆっくりを吹っ飛ばし、その方向にある茄子の茎を複数なぎ倒した。 男はつかつかとそちらに歩いていく。 「ぐっ、がっ、ゆぎぎッ」 土にまみれた汚らしい饅頭は痛みで痙攣している。動くことはできないだろう。だが、殺意のこもる視線は男に向かっていた。怒りで真っ赤になった眼だった。 男も同じ眼をしていた。 後ろで親ゆっくりを呼び、案じる子ゆっくりの悲鳴が聞こえるが、委細構わず男はそれをつかみ、高く掲げる。 「ぅおらっ!」 そして地面に叩きつけた。 再び上がる絶叫。バックグラウンドで起こる子ゆっくりの三重奏も、一段大きくなる。 餡を口や鼻から漏らし、意識ももうろうとなって視線を向けることも叶わなくなったそれを男は拾い上げた。 「とうちゃん」 子供が涙ぐんで駆け寄ってきた。男は空いている方の手で頭を撫でてやる。 「ケガないか」 子供はコクコクと頷いた。段々と戻ってくる笑みを見て、男は安堵する。 亡き妻の忘れ形見である一人息子。万が一何かがあっては、あの世で顔向けできない。命に代えても守らなくてはいけないと考えていた。それを傷つけようとしたこのゆっくりは万死に値する。 次に男は、子ゆっくりの元へ歩む。腰を屈め、顔を近づける。 二匹の子ゆっくりが漏らすような悲鳴を出し、震え上がる。盲目となった子ゆっくりは、姉妹の様子から恐怖が近づいたことを知って、それに倣う。 「お前らのもう一匹の親はどこだ?」 言葉を掛けたものの、細かい振動を見せるばかりで何も答えない。口を開けたまま、あるいは閉じたまま、ガタガタしている。 男は苛立ちのこもるため息をつき、手に持ったモノを見せて言う。 「殺すぞ」 あまりにも簡素な台詞であり、だからこそ真意を明確に示していた。 子ゆっくりは、自分たちの親の命がこの返答に掛かっていることを理解した。いやが応でも。それで、無理矢理に言葉を外に押し出した。 「い、いがひ、いないっ」 「おとうざん、もう゛っ」 「ずっと、まえにっ」 しばらく要領を得なかったが、やがて得たい回答は得ることができた。父親にあたる親ゆっくりは、既に何かしらあって死んでしまっているらしい。 (ということは、こいつらも片親か) 幼くして親と死別する悲しさを、自分の子供は味わった。そして喪失感はずっと付いて回ったろう。男手一つで必死で育ててきたが、それでも子供には少なくない負担を掛けたに違いない。 男は顔を子供へ向けた。「坊主」 「なぁに、とうちゃん」 「こいつら、ちゃんと殺しとけ」 三匹の子ゆっくりが沈黙と共に青ざめる。瞬間、ワッと広がるような絶叫を上げた。 「どぼぢでぇえぇええええ!!」 「だずげでよぉおおおお!!」 「いやだぁぁああああああぁ!!」 涙とよだれと餡をまき散らしながら無様にわめき散らす糞饅頭を一べつし、男はきびすを返して家に向かう。子供は父親の言葉に素直に頷き、嬉しそうに虐待、あるいは虐殺に掛かった。 ――大事な息子を危険にさらしたクズどもに生きる資格はない。同じ境遇? ふざけるな、何も理解できねえくせに。お前らにできるのは、せいぜい息子の遊び道具になることだ。 ゆっくりがこの辺りの民家、畑を荒らしたという事例は今年に限ってほとんど聞いていない。親ゆっくりは手に持ったコレしかいないということだし、子供が襲われることはもうないだろう。 だから、こっちはこっちで安心して、たまった鬱憤を晴らさせてもらおう。 そうして、扉のノブに手を掛けたときだった。 「ひと思いに殺してやったらどうだ?」 唐突だった。反射的に振り返るも、誰の姿もない。 「誰だ」 返事はなかった。 「あァ、誰だよ? 俺がどうするか俺の勝手だろ」 やはり返事はなかった。 代わりに、たすげ、たずげで…と手の中の饅頭がうめき声を発し始めたので、口に拳を叩き込むと、ぐばひゃと声を出して、それ以降は意味ある言葉を発しなくなった。苦悶のうめきが相変わらずうざかったが。 「勝手か。確かにな」 再び声が掛けられる。若い男の声だった。いや、中年の女性の声にも聞こえる。相変わらず姿は見えない。 「しかし、どんな大義名分がある?」 「だから誰だよ! 饅頭相手にンなもんイラネーだろ!」 付近にそれといった障害物はない。家の周りにいるのかと裏に回ったが、やはり誰もいない。 「おい! どこだッ!」 返事は無かった。そして、それっきり、もう何もなかった。 父親の怒声に、しゃがんでいた子供が立ち上がって、丸くなった眼を向けている。それに対して引きつった笑顔で手を振ると、男は悶え苦しむ饅頭に拳を数発叩き込んでから、再び家の中に入った。 多分どこかの偽善者だろう。聞き覚えのない声だったから、よそ者がたまたま見かけて野次を飛ばしたとか、そんなのに違いない。所詮、隠れて陰からしか物も言えない小心者だ。放っておけばいい。 余計なストレスを投げつけられたが、さっさとまとめて発散してしまおう。 男は、テーブルに親ゆっくりを打ち遣ると、とりあえず釘と金槌を持ち出した。 数時間後。 部屋の中で満足の吐息が一つつかれた。 テーブルには、奇怪なオブジェ、あるいはただの生ゴミとも言えるものが存在していた。 放射状に伸ばされた皮が釘で打ち止められている。性器に当たる部分はえぐられ、代わりにくり抜かれた眼球が押し込められている。残された眼、その周りを囲むように、はずされたリボンが無理矢理皮に穴を開けて縫いつけられ、餡にまみれたぶざまな華を咲かせている。頭部には無造作に抜かれた髪の毛が、いびつに苗を植えた水田のように荒れ果てた様相を呈してる。そして、舌と口内には、色とりどりの待ち針が所狭しと生やされていた。 それでもしゃべることはできるし、片目自体も傷ついてはいない。自分の惨状を認識させ、様々な絶叫を上げさせるためには当然の処置だった。 砂糖水を掛けながら適度な再生を促し、死ぬか死なないかの間際を見極め、虐待の至福を長く味わう技術。どうやらなまってはいないようだった。……やや力を入れすぎてしまった感は否めないが。 ここしばらく人里に現れるゆっくりはいなかったので、知らず知らずのうちにフラストレーションがたまっていたのかもしれない。 飛び散った餡がテーブル一面に汚らしくこびりついている。これからこの上で夕食を取ることを考えると、もうそろそろケリをつけて綺麗にしておかないといけないだろう。 男は勿体をつけて金槌を振り上げた。瀕死の親ゆっくりにも見えるよう緩慢に。そして、とどめの一撃を振り下ろそうとした。 「失礼」 ぎょっとして、身体が硬直する。声の方向へ動く眼球が、さび付いた装置のようにきしみをあげる感触を生じさせた。 差し込む夕日で真っ赤になった窓辺。そこにぽっかりと黒い穴が空いていた。 丸いシルエット。……生き物? まさか。 「ゆっくり……?!」 「お察しの通り」 球体の身体。人語を発する人面。確かにゆっくりの特徴を備えている。 だがその姿は異様だった。 黒いと感じたのは夕日を背にしていたからではなかった。目が慣れてきてわかったが、身体そのものが墨汁をぶちまけたように真っ黒だった。 頭髪も同様に墨一色であり、ところどころからブラシ状の先端が突出していた。害虫であるイラムシの棘を連想させる。 そして片目だった。右目だけが開けられて、真っ直ぐこちらを見ている。左目側は長く伸ばされた髪が垂れており、恐らくは不自由なそれを隠しているのだろう。 見たことがないゆっくりだった。稀少種だろうか。いや、畸形? 「ずいぶん手間をかけたもんだ」 テーブルに眼をやり、何の感慨もなくその黒いゆっくりは言った。 「害獣を処分するならすぐ殺せばいい。人間への恐怖を刷り込ませるなら、生かして返すべきだ。そのどちらでもないのはなぜだ?」 「はっ、単なるストレス解消だよ。まさか饅頭風情が説教か?」 自称正義派のような物言いも神経を逆撫でたが、同族が死に瀕しているというのに平静な態度を取っていることが男の苛立ちをさらに増加させる。 「誰に言われようと事実は変わらないな。なるほど、自分の卑小さを紛らすために命を弄んでいるわけだ」 「お前は何なんだ? 不法侵入だろうが」 「一応大義名分はあるんだ、三つほど」 大義名分という言葉で、記憶がよみがえり、そして理解した。 「てめえだったのか」 家に入る際に掛けられた声。改めて思い返してみると確かに声色も同じものだ。 「人様にちょっかい掛けてただで済むと思ってんじゃねえよな」 金槌を握り直してすごむ。こいつは何か上から下にものを見ている気がする。ゆっくりのくせにだ。見ているだけで気分が悪い。 「一つ、無意味に虐待死された同族に対する復讐」 チラリと窓の外を見遣り、まるで動じないまま、黒ゆっくりは論弁を続ける。 「まあ、でもこれはどうでもいいんだ。こちらの群れのきまりでは、人間の領域に立ち入った者は何があっても関知しないことになってるのでね。要は付け合わせの理由さ。お前さんよりマシって程度の」 「お前、こいつらのリーダーか」 「とりあえずは」 「群れの仲間に冷たすぎるんじゃねえのか、ああ?」 黒ゆっくりが無い肩をすくめたような挙動を取る。男の腹のむかつきがさらに募る。 「二つ、捕食」 「あぁそうかい、それで畑荒らしか、人のもん横取りして盗人猛々しいなぁ!」 「違う違う。ゆっくりが農作物だけを食べるものだと、単純な頭で理解されても困るな。基本ゆっくりは雑食なんだ。人間ほどじゃないがな。で、肉も食う」 肉? 家畜は飼っていない。まさか食料庫の干し肉でも漁ったか!? 疑問を察したように、黒ゆっくりは答えた。 「人肉のことだ」 一瞬理解が遅れた。あまりのことに、それまで自分に占めていた怒の感情が一切吹きさらわれた。感情の空白の後、笑いが込み上げてきた。 「お前が? 俺を食う? はっ、饅頭が? 人間様を? ハハハッハハハハッ!!」 「なかなか美味かったな」 「……ハ?」 美味かった、だと? 「何を言ってる?」 黒ゆっくりは答えず、窓の外に再び眼を遣った。 そうだ、こいつは虐待死の復讐と言った……俺はまだ殺していない。殺したのは…… 「何を、食った」 夕日は落ち、外は暗くなり始めている。この時間になったら、家の中に戻るようにしつけてある。しかし、いない。 「まあ落ち着いてほしいな。お前さんも何か腹に入れたらいい」 「答えろッ!」 まさか、こいつは、まさか。 「牛乳などはどうだ? カルシウムも取れる」 「答えろぉおッ!!」 怒号が喉を張り裂かんばかりに発せられ、窓を響かせる。信じたくない、そんなはずがない、そんなはずがない! 黒ゆっくりは大仰に目を見開いて、何かに気づいた様子を演じる。 「ああ、そうか。怒るのも無理はないな。そう、まだお礼を言ってなかった」 黒いゆっくりは、ゆっくりと、黒く、言った。 「“ごちそうさま”」 視界が真っ赤に染まった。意味の為さない咆吼を吐き出し、男はゆっくりへ飛びかかった。 轟然と響き渡る破壊音。窓ガラスが割れ、窓枠は折れて、辺りに飛び散った。 そして、咀嚼音。飲み込んだその口から、言葉が発せられる。 「三つ、正当防衛。以上が、今回の殺人の大義名分だ」 男は見失った標的が後ろにいることを、ようやく悟った。首を押さえながら振り向く。手の下で、今黒ゆっくりが食べたものが欠損していた。頸動脈を含めた首の肉だった。 「ただのゆっくりでないことは理解できただろうに。どの程度の能力か確認もせずに向かってくるのは、何とも愚かだな。まあ、冷静さを失うように振る舞いはしたが」 湧き出す泉のように、男の手から赤い血潮が漏れていた。止めどなく抜けていく命の本流は、顔色を青ざめさせると共に意識を暗くさせていった。 「な、何なん、だよ、おまえ」 床に倒れ込む直前の、男の最期の言葉に、黒ゆっくりは、 「それは俺も知りたい」 素っ気なく答えた。 鉄さびの臭いが充満する暗闇の中、ただ片目だけが鬼火のように光り、浮かび上がっている。 「で、どうする?」 片目はテーブルに問いを投げる。 「…………」 返事はない。 ガラスが硬いものと軽く触れあう音。そして、水が飛び散る音が広がった。 「少しは回復したかな?」 「……ぉさ」 「もう少し砂糖水が必要か? うん、大丈夫そうだな。で、どうする?」 「……おさ……どうし…て」 「『長、どうして』? 何についての疑問だ? わからないな」 「……ど、うして、たすけ……」 「どうして助けてくれなかったの、か。今更その質問をするようでは、子供が死んでも仕方ないな」 軽く我が子の死を宣告されて、テーブルの上のものがビクリと震えたのが闇に伝わる。 「人間への警戒も群れのおきても十二分に通達したはずだが、お前はそれを子供に教えなかったんだろう。さて、先ほどの質問だが、『どうする?』。 生きたいか? 死にたいか?」 返事はまたもなかった。だが、沈黙こそが反応の気配を生じさせていた。黒ゆっくりは続ける。 「人間の領域に立ち入ったこと自体は罪に問われないし、子供が死んだのも子供の自己責任で片付けられるが……子供を無為に死なせたお前は、群れの中で冷たく見られても仕方ないわけだ。子供を失い、群れから阻害されて生きていく覚悟はあるか? しかもその傷だ、後遺症もありうるな。子供もできず、天涯孤独だ」 どうする? 沈黙が問いかける。 闇。 しばらくして、小さな声。かすれるような、引きつるような。その嗚咽は部屋の中から割れたガラスを通り、静かな夜風に消された。 黒ゆっくりは欠けた月の光を受けて、宙を飛び、屋根の上に乗った。そして、口をわずかに開ける。 遠くで犬の鳴き声が呼応した。しばらくして、呼びかけた本来のものが羽音を響かせて近づいてくる。 丸く、白い、淡い群青の毛髪を持った人面。 一羽、二羽、五羽、十羽と瞬く間に数を増やし、黒ゆっくりの前に集う。 二十数羽のレミリア種のゆっくりだった。人には聞こえない高音域の音波の合図を待って、近くに隠れていたのだ。 群れの長が指示を出す。 「畑と屋内にある『餌』を分割し、運搬しろ。分配は参謀パチュリーに従え。……それから、中にいるレイムには手を付けるな。そのまま死なせてやれ」 サッと夜の闇に散るレミリア種を片目に映し、黒ゆっくりは静かに言葉を置いた。 「なべて世は事も無し」 黒ゆっくり1 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/439.html
とある講演会場。 今日は、ある著名なゆっくり研究家が重大発表をするため、会場内は人で溢れかえっている。 その多さは、ここに幻想郷中の全ての人間が集まっているのではないかと錯覚するほどであった。 どんな発表なのか、どんな新しい説が飛び出すのかと推測する者、ただ研究家の説が聞きたい熱心な信者、有名な人だと言う事で見に来ただけの野次馬……。 ――それでは、ゆっくり研究家、○○さんの入場です。 そんな、多種多様な人々でざわめく会場内が、研究家の入場により水を打った様にシンと静まりかえった。 研究家は、一つ咳払いをしてから、ゆっくりと語り始めた。 「ゆっくりできない。それは、ゆっくりにとって最も嫌な事です」 「彼らは、自分がゆっくりするためには同種を殺し、食べます。時には自分の親兄弟ですら」 「彼らにとって、それほどゆっくりする事が重要だという事から、私はある仮説を立てました」 「ゆっくりには、第四の本能ともいえる『ゆっくりしたい欲求』がある。それを満たすためならば、睡眠・食・性の他の三大欲求を犠牲にする事さえ厭わない」 備え付けの水を一口飲み、話を続ける。 「ところで、皆さんはゆっくりはどうすれば死ぬかご存知ですか?」 「基本的に、中身を取り出すとゆっくりは死にます。餓死もありますが、この場合は中身が減った事による死亡なのでしょう」 「眠りもせず食べもせず生殖もせず……一見、すぐに死にそうではありますが、ゆっくりさえさせておけばゆっくりは死にません」 そんな事が可能なのか、あの先生なら出来るんじゃないか……小声でそんな事を話し合い、ざわめく会場。 そんな会場も、研究家が「お静かにお願いします」と言っただけで、一気に静かになった。 「ここからは映像と一緒に説明させていただきます」 皆に見える様に大きく引き伸ばされた映像が、研究家の頭上に現れる。 「映像は、睡眠欲の抑制を試したものです。このゆっくりまりさは――」 発表はまだまだ始まったばかり。人々は、固唾をのんで映像を見つめ、研究家の話に聞き入っていた。 『ゆっくり魔理沙が極限までゆっくりできる話 その1:睡眠欲編』 「ゆっぐりやべろぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆぎゅっ! ……なんでありすのあいをこばむの? まりざぁぁぁぁぁぁ」 ゆっくりまりさが、ゆっくりアリスに体当たりをして吹き飛ばす。 アリスが求愛をし、まりさがそれを拒む……ゆっくりの性質上、求愛を拒む事自体は良くあるのだが、この2匹は様子が違っていた。 ゆっくりまりさは、ゆっくりアリスを本気で殺そうとしているのである。 「ゆっぐりじね! じね! じねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「まりざ、まりざぁぁぁぁぁぁ! ありすのあいをうげいれでぇぇぇぇぇ!!!」 ぼろぼろになったゆっくりアリスが、それでもまりさと生殖行為をしようとにじり寄る。 まりさは、本気で嫌がっているのだろう。目は血走り、よだれを垂れ流し、基本的にのんびりとした性格のゆっくりとは思えないほど険しい表情を満面に浮かべている。 「じねぇぇぇぇぇ!!!」 「まぎゅっぶぁ! ま……ぃ……ぁ」 ついに、ゆっくりアリスはクリームあんをぶちまけて死んだ。 荒い息を整えつつ、ゆっくりまりさは険しい表情を崩さずに呟く。 まりさをゆっくりさせないやつは、みんなしんでね……と。 このゆっくりまりさは、元々は他のゆっくりと同じく充実したゆっくりライフを営んでいた。 エサは毎日腹いっぱい食べてもあまるほどにあるし、雨を恐れる心配もない。 誰もいないのは寂しいけど、ゆっくりれみりゃやフランなどもいないため、心の底からゆっくりする事ができていた。 だが、ここ何日かは寝る間も休む間もなく連続してゆっくりアリスに襲われたために、凶暴化してしまったのである。 最初は、ある程度の攻撃で追い払っていた。 襲ってくるアリスは皆判を押した様にまりさより小さかったから、簡単に撃退できたのである。 だが、追い払ったと思うとすぐにアリスが来る。追い払う、来る、追い払う、来る……10匹も撃退した頃、まりさはゆっくりする邪魔者のアリスを殺す事に、何のためらいもなかった。 ゆっくりまりさは、アリスの死がいを引きちぎる事で完全にアリスが死んだのを確認した後、ようやく元のゆっくりした表情に戻った。 「やっとゆっくりできるよ……」 心の底から安堵した響き。 食事やその他の事は、もう明日で良い。まりさは充血した目を閉じ、そのまま眠りにつこうとした。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆぐっ!?」 まりさが眠ろうとした時、突然声が聞こえてきた。 誰だろう、どこにいるんだろう……まりさは辺りを見回したが、誰もいない。 「だれ? どこにいるの? まりさはおねむだから、ゆっくりねさせてね……」 「だめだ! 眠ったらゆっくりできないだろう!」 「ゆっ!?」 ゆっくりできない。それは絶対に嫌だ。 本能に根付いたゆっくりしたい魂で、まりさは強引に起きようとした。だが、どうにもならない。 数日眠れていない事に加えて、アリスとの攻防でへとへとになっているのだ。 起きよう、起きようと思っても、自然と眠くなっていく。 その後も、まりさが眠ろうとすると「ゆっくりしていってね!」と叫び、決して眠らせない声。 ゆっくりまりさは、段々苛立ってきた。 ゆっくり魂などとっくの昔に消し飛び、ただ眠りたくて眠りたくて仕方がなかった。 「いいかげんにしてよ! おねむなのにねさせてくれなきゃ、ゆっくりできないよ!」 「いーや、寝ていたらゆっくりできないぞ? ほら「まりざぁぁぁぁぁぁ!!!」」 声が終らないうちに、ゆっくりアリスが凄まじい勢いでゆっくりまりさの元へ駆け込んでくる。 まりさは、勢いのままに飛び込んでくるアリスを必死にかわした。 「ゆぎゅっ! ありす! ありすはゆっくりしね!」 「どーじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!!! ありずはまりざをごんなにあいじでるのにぃぃぃぃぃ!!!」 泣きながら飛びかかるアリス。まりさの言う事、自分の愛を受け入れてくれない事が信じられないのだろう。 一方のまりさは、もう何日も寝ていないのである。どうしても眠りたかった。 そのため、このアリスも殺して眠ろうと試みたが、眠ろうとするとまた声が聞こえ、別のアリスが飛び掛ってくる。 掛かってきては殺し、声が聞こえて掛かってきては殺しを繰り返し、5匹目のアリス。 全く同じ軌道で飛び掛ってきたため、振り払おうとすれば出来るのだがあえてそうせず、まりさはされるがままになっていた。 「まっまりざ! ありずはうげいれでぐれるのね! うれじいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「……なんでもいいから、はやくやってはやくおわらせてね……」 飛び掛ったアリスを拒む事なく、そのまま受け入れるまりさ。 「まりさ! まりさまりさまりさまりさまりさ!!!」 「ゆっ……はやくしてね……」 アリスだけが動き、まりさは全く動かずに振動を受け続けている。 アリスを殺す、声、アリスが飛び掛る、殺す、声、飛び掛る……何度も何度も繰り返した結果、まりさはついにある結論に達した。 ――アリスを殺せば声がして眠れない。アリスに好きにさせれば、眠れる。 アリスが好き放題にすれば確実にまりさは死ぬ。それに気付かない、あるいは気付いていてあえて無視していたまりさは、既にどこか狂っていたのだろう。 「まっまりさ! まりまりまりまりまりまりまりまりささささんんんんんんんんほおおおおおおおおおおすっきりー!」 「……ゆっ……ゆ……ゆぅ……ゆぅ……」 絶頂に達するアリス。だが、まりさの方は全くの無反応どころか、穏やかな表情で眠りについていた。 アリスがどれほど激しく動こうと、茎が何本生えようと、茎に養分が奪われ、刻一刻と生命の危機が迫っていようと、全く意に介さずに、まりさは数日ぶりの睡眠をただ貪っていた。 「まりさまりさまりさまりさ! すっきりしてるよ! すっきりできるよ!!! んほおおおおおおおおおおイグイグいぐぅぅぅぅぅぅ!!!」 「……」 「まりさまりさかわいいよかわいいよまりさぁぁぁぁぁ!!! ありすもすっきりまりさもすっきり! たっまんねぇぇぇぇぇ!!!」 「……」 「ままりりささ!? まりざもすっぎりじでるよねぇ!? ごだえでよぉ!!!」 不自然過ぎるほどに何も言わないまりさの様子を、流石に不審に思ったアリスは動きを止めた。 「……まりさ? なんでなにもいわないの?」 もはや茎なのか饅頭なのかの判別すら難しいまりさに、親愛の印であり、求愛のサインでもある頬のすりよせをして、何とか反応を引き出そうとするアリス。 まりさはとっくの昔に死んでいた。死因は妊娠のし過ぎからくる栄養失調である。 だが、茎を除けた中にあるその顔は、やっと眠れたという満足感からか、とても安らかなものだった。 映像は、まりさが死んでいる事にようやくアリスが気付き、白目を剥いて叫び声をあげるところで終った。 「この時は、アリスをけしかけ、ゆっくり出来ない状況を作り出す事で睡眠欲をなくそうと試みました」 「ですが、このまりさはアリスに襲われる事より睡眠欲を優先したのです」 「ちなみにこの後、アリスは私が美味しくいただきましたw」 研究家の下手な洒落に、一部の信者だけがどっと笑った。 あまりウケなかった事が恥かしいのか、研究家は大多数の冷ややかな目から話をそらす様に一つ咳払いをした。 「ごほん……この失敗から、自然のゆっくりは睡眠欲がやや強いと学びました」 「次は成功例を見ていただきましょう。このゆっくりは、先ほどのまりさから取れたものですが――」 気を取り直して、すらすらと説明していく研究家。 今度は、病室の様に真っ白い部屋に、ぽつんとゆっくりまりさが一匹だけ鎮座している映像が映し出された。 会場内の人々は、食い入る様に映像を見つめている。 映像は、ゆっくりと動き出した。 「ゆっくりちていってね!」 生まれたばかりのゆっくりまりさが、家族に挨拶した。 だが、返事はない。ここにいるのは、ゆっくりまりさ一匹だけだからだ。 「ゆ……ゆー? みんなどこにいるのー? かくれんぼなら、まりちゃもまじぇてー」 辺りを見回したが、誰も見当たらなかった。 意地悪されているのかと思い、まだ上手く回らない口で、周囲に声をかけたが返事はない。 「いじわりゅやめてー。みんなでてきてー」 「なんでなにもいわないの? ゆっくりちてよー」 「おかーちゃーん、おねーちゃーん……どご、いっだの?」 「ゆ……ゆ……ゆ……ゆ”わ”あ”ぁぁぁぁぁん! み”ん”な”どごでぃい”る”の”ー!?」 何度呼びかけても返事はない。這いずる様に少しだけ動いても、誰もいない。 部屋の中に、ゆっくりまりさの泣き声が響き渡った。 ひっくひっくとしゃくりあげる声だけが響く部屋。 ゆっくりまりさは、食事も睡眠も取らずにただ泣き続けていた。だが、例え食事が目の前に置かれたとしても、食べるかどうかは分からない。 まりさはまだ生まれたばかりなのだ。食事が必要な事なのかどうか、分かっていない可能性が高い。 「ゆ……ひっく、どご、いっだ、っく、のぉ……」 泣き声が小さくなっていく。泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまいそうだ。 だが、この実験中に眠る事は許されない。 半ば以上意識が闇に溶け込んでいたまりさの耳に、何者かの「声」が飛び込んできた。 「寝たらダメだ!」 「ゆっ!? だりぇ? どこにいるの!? ゆっくりちていってね! ゆっくりちていってね!」 「寝たらダメだ!」 「ゆっ……ふぁい! ゆっくりねまちぇん!」 「絶対に寝るなよ」 「ふぁい! でったいにねまちぇん!」 声を聞いた瞬間、ゆっくりまりさは勢い良く飛び起きる。 初めての声、初めての別の存在が嬉しくてたまらなかった。 相手が自分の言う事に聞く耳を持たなくても、ただ話が出来る事が嬉しかった。 だから、声の言う事を素直に受け入れ、絶対に眠らない事をそのアンコの奥に刻み付けた。 声が聞こえてから数日。 小さなゆっくりまりさは、食事を摂っていた。 普通のゆっくりの様に「むーしゃ、むーしゃ」とも「うめぇ! めっちゃうめぇ!」とも言わない。 言葉を発しながら食べたり、そこら中にカスを飛び散らせながら食べるなどの汚い食事の仕方は後天的なものである。 そもそも、誰とも会った事がなく、声しか聞いた事のないゆっくりまりさには、一々そんな事をする理由もない。 ただ静かに食事をし、満腹になったらゆっくりしているのである。 「ゆー……ゆっくり……」 「寝るなよ!」 「ふぁい! ねてまちぇん! まりちゃねてないよ!」 嬉しそうに飛び跳ねるまりさにとって、食事の後の声は唯一の楽しみだった。 「ネタラダメダ」「ゼッタイニネルナヨ」「ユックリシロ」「メシノジカンダ、クエ」この4つの言葉以外に聞こえるものは何もないが、だからこそ声が大切な存在になっていた。 ――おかーちゃんってこんなかんじなのかな。 眠らせない事だけを求めている声に対し、そこまで思い込む様になっていた。 生まれてから一度も、誰とも会った事のないゆっくりまりさにとっては、それほどに声は重要な存在なのだ。 欲を言えば、動いたりゆっくりしすぎた時以外にも聞きたいという程度か。 だからゆっくりまりさは、たまにわざと動いたりゆっくりし過ぎたりしてみる。 そして、大好きな声に返事をする。 ゆっくりまりさは、端から見ると不幸だが、本人からするとこの上ない幸せなゆっくりライフを営んでいた。 映像は、帽子を被っていない赤ちゃんゆっくりまりさが幸せそうにゆっくりしている場面で停止した。 「――以上の様に、声を聞かせ続ける事で睡眠を取らずにした例です」 「なお、このゆっくりまりさは判別のために帽子をとってあります」 「このゆっくりは現在も生きており、現在は50センチ程度にまで成長しました」 映像が切り替わり、帽子を被っていない成体のゆっくりまりさが映し出される。 「それがこちらのゆっくりまりさです。このゆっくりは、まだ一度も眠ってはおりません」 帽子を被っていない以外は、普通のゆっくりまりさがゆっくりしているだけの画像に切り替わる。 生まれてから一度も眠っていないとは信じられないほどに血色が良いその姿は、普通のゆっくりと比べてもなんの遜色もないものだった。 「それでは、次の映像の準備などのため、これから四半刻の休憩を挟ませていただきます。少々お待ち下さい」 一礼をして、脇に下がる研究家。ほどなく館内放送が響き渡る。 ――これより、四半刻の休憩を挟ませていただきます。 ――休憩中の出入りは自由となっております。厠などを済ませて下さい。 館内放送が流れると同時に、次々に立ち上がり、厠に向かう人々。 次の説明まで四半刻、厠は常に人が満杯になるだろう。 9スレ 382でナメた事ぬかした……もとい、お願いしていたまりさがいたので、極限までゆっくりさせてみました。 限界までゆっくりしていってね! 本来は1つになるはずでしたが、長すぎるため分けました。ゆっくり楽しんでね! by319 続 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1880.html
ゆっくりの躾け方・上巻 はじめに ゆっくりを躾けるのは非常に難しい。 何故なら異常なまでに知能が低く、教えた事を三分で忘れるからだ。 比較的簡単なのはれいむ種だろうか。 知能レベルは最低に近いが、それでも根が素直なところがある。 生まれた時から愛情を注ぎ込むか、恐怖と暴力を与えればそれで済む事が多い。 逆にまりさ種は非常に難しい。 愛情を与えても、飼い主は自分を保護するためのものとしか見ず、横暴な態度は何時までも残る。 暴力で従わせようとしても、従った振りをして虎視眈々と脱走や報復の機会を窺う様になる。 また、その強い好奇心とリーダー気質から周囲の飼いゆっくりを巻き込んで悪さをする事も報告されているので手に負えない。 ブリーダーの間ではまりさを調教できたら一人前と言われているほどだ。 では、ゆっくりれみりあはどうなのだろうか。 難易度は中といったところ。頭は悪いが、他の種と違って悪知恵が働かないのはプラス要因。 毎日躾を欠かさなければ、それなりのレベルにまでは簡単に持っていける。 もっとも躾を怠れば他のゆっくり以上の早さで増長し、知能の劣化もそれに比例する。 そしてそれ以上に、ある一定以上の能力を求めるのには難しい。 何故なら持ち前の知能の低さが邪魔をし、高度な事を教え込めないからだ。 れみりあ種に高度な事を覚えこませるには、それこそ達人と呼ばれるほどの腕前を必要とする。 さて、前書きはこのくらいにしておいて、早速行動に移ってみよう。 前述の通り、初心者にはれいむ種から手を付ける事をおすすめする。 まずは固体の選別。 初心者は知能強化を施された赤ん坊を買うのをおすすめするが、野生の個体を選ぶとなるとそれなりのコツがいる。 「ゆっくりしていってね!」 初対面で上記の様な事を言ってくる固体は間違いなく知能が低い。 人間の恐怖を知らない野生の個体は、学習能力が著しく低い事を示す。 少しでも知能があれば、自分より大きい生物に対して警戒するのが当然だろう。 ついでに言えば他のゆっくりと情報交換ができていない証拠でもある。 なので上記の様なゆっくりを見つけたら優しくハンマーで潰してあげよう。 知能の低い野良ゆっくりを残しておくと、後々誰かが被害にあうかもしれない。 外出時には専用のゆっくり潰しハンマー(税込:535円)を持ち歩くのがエチケットだ。 次に選別の合格基準だが、これは方針によって異なる。 愛を与えるのなら家族がいる固体は止めた方がいい。人間よりも同族に対しての感情が強いからだ。 群れからはぐれた固体や、家族から追い出された固体なのが御し易いだろう。 そしてできれば赤ん坊がいい。成長後にその性格を矯正し、知識を与える事は難しい。 恐怖を与えて従わせるのならその逆。 家族はいい脅迫の材料になるし、見せしめにも使える。 これもやはり赤ん坊が良いし、何より長い間楽しめる。 と、言っても変異種でもない限り個体差はそこまで大きくない。 面倒だと思ったり、自分の腕に自信があったりするのならどんな固体でもいいだろう。 「……なるほどな」 お兄さんは読んでいた本を脇へと置き、透明な箱に入ったゆっくりれいむを眺める。 家の前で倒れていたのを保護し、飼ってもいいかなと考えていたところだ。 「こいつ飼えるのか? 本見た限りでは結構難しそうなんだが」 箱の中のれいむはお兄さんの考えも知らず、暢気に眠っている。 散々お兄さんに餌を要求し、満腹になったら直ぐに眠ってしまったのだ。 まあ、非常にゆっくりらしい性格をした固体だと言えるだろう。 と、その時れいむが目を覚ました。 しばらく辺りをキョロキョロとしていたが、やがて自分が知らない場所で透明の箱に入れられている事に気付く。 「おにいさん、れいむへんなはこのなかにはいってるよ! ゆっくりだしてね!」 お兄さんが声を掛ける前に、れいむは箱から出せと要求してくる。 が、そうはいかない。ゆっくりを部屋の中で放し飼いする気はお兄さんにはない。 あくまで観察したり、偶に遊んでやる程度の存在でいいのだ。 「おにいさんれいむのこえがきこえてないの? それともばかなの? れいむのいうことがりかいできないの?」 その声にお兄さんの眉が傾く。 助けてやった上に餌もやったのだが、それを忘れていきなりこれか。 お兄さんは騒ぐれいむを無視し、先ほどの本の続きに目を通す。 では実際に躾を行っていこう。 まず全体を通して注意すべき事は、ゆっくりより自分の方が上だと理解させる事だ。 これは愛情を与える場合にも必須だ。これがないと、ゆっくりは飼い主の事を便利な道具程度にしか思わない。 大事なのは懐いてないうちはゆっくりの要求を絶対に聞き入れない事。 餌が欲しい、遊んで欲しい、外に出して欲しい、などと言った要求は全て却下。 何故なら簡単に要求を呑むと、ゆっくりは飼い主を自分より下だと思い込む。 それに、飼い始めたばっかりのゆっくりを箱の外に出すのは危険だ。 何故なら十中八九部屋の中を荒らしまわるか、自分の家宣言をし始めるからだ。 調子に乗ったゆっくりを一気にどん底まで叩き落し、短期間で服従する方法もあるが初心者にはおすすめできない。 上記の様に書いたが、餌はやらないと流石に不味い。 ゆっくりは多少の絶食では死にはしないが、固体によっては絶望や思い込みで死に至るので長期間の絶食はおすすめはできない。 さて、餌のやり方だが、まずは自分の食事をゆっくりに見せながら食べる。 そして自分の食事が終わった後、食べかすや野菜クズをゆっくりに与えよう。 その際、いただきますとキチンと言わせよう。言わない様なら軽めの罰を与えていい。 そうする事によって、飼い主の方が上であるとゆっくりに教えるのだ。 間違ってもゆっくりの食事を優先したり、ゆっくりに手作りで餌を作ったりするのはしてはいけない。 そうする事によってゆっくりは増長するうえに、ゆっくりは自分に都合の良い事は中々忘れない。 少しでも餌のランクを落せば癇癪を起こし、飼い主の食事まで要求してくる事も多々ある。 大事なこの作業を根気良く続け、ゆっくりに自分の立場を理解させる事が…… 「……いかん、めんどくさそうだな」 お兄さんは本に栞を挟んで閉じ、溜息を吐いた。れいむは読書中も煩く喚きたてていたが、当然無視。 お兄さんの認識よりも遥かに、ゆっくりを飼うのは面倒そうなのだ。 もっとも生き物を飼うのは大抵面倒なのだが、生き物を飼った事のないお兄さんには分からない。 「む゙じぢない゙でえ゙ぇぇぇ」 「……まあ、やるだけやってみるか。懐けば可愛いだろうし」 それに犬や猫よりかは手間も掛からないだろうし、話し相手にもなるだろう。 そうお兄さんが考えていると、ふと周囲が暗くなっている事に気付く。 そろそろ夕食の時間か。そう思ったら腹が減ってきたので、お兄さんはれいむを無視して台所へと移動する。 「ほーら、メシだぞお」 「ゆゆっ! おにいさんれいむのためにありがとう! ゆっくりれいむにちょうだいね!」 お兄さんは焼き魚と味噌汁、そして白米をれいむの前に置いて見せ付ける。 そして透明な箱と取り去り、れいむを解放してやった。 そうすると当然れいむは飯へと急ぐが、たどりつく寸前にお兄さんの手が伸びる。 軽いデコピンによってれいむは弾き飛ばされ、勢い良くタンスにぶつかった。 そして素早く透明な箱を被せ、お兄さんは箸に手を伸ばす。 「どうじでごんなごとずるのおぉぉぉ」 「誰がお前の飯だっと言った。これは俺の飯だ」 「ゆ? おにいさんなにいってるの? それはれいむのごはんだよ?」 泣きながら喚くれいむを他所に、お兄さんは白米を掻きみ、酒で咽を潤す。やはり労働の後の一杯は美味い。 頭に疑問符を浮かべているれいむの戯言など、耳に入らぬほどだ。 「ゆゆっ! おにいさんれいむのごはんかってにたべないで! れいむはどろぼうきらいだよ!」 「だから何時お前の飯になったんだ。これは俺が用意したんだぞ」 「そんなのかんけいないよ! れいむがみつけたんだかられいむのごはんだよ!」 いかん、埒があかない。 お兄さんはそう舌打ちし、食事を中断して本を手に取る。 そもそもお兄さんが持ってきたのに、どうしてれいむが見つけた事になっているのか。 ゆっくりへの対処法 食事編……58P それでもゆっくりが食事の際に我侭を言う事は多々あります。 曰くその食事は自分のものだ、餌の量が少ない、餌の味が悪い、などと要求は多種多様です。 そういった事を言い出した場合、罰として餌を取り上げたり、次の餌を極端に少なくしたりすると効果的でしょう。 ゆっくりの知能は非常に低いですが、餌についての事は案外素早く覚えます。 不満を言ったりすれば自分の餌がどんどん少なくなり、味が落ちていく、貰えなくなると理解させるのは難しくはないです。 しかし、まりさ種の場合は飼い主の食事を横取りしようとする事も多いので、反省したから箱から出して、などと言っても無視しましょう。 また、どうしても聞き分けないのなら絶食や体罰も手です。 絶食の目安は丸一日です。一食抜いた程度では、ようやく自分の命令を聞いて持ってきたと錯覚される事も多々あります。 半端にやると逆効果になるので気を付けましょう。 体罰は頬をちぎる、もしくは針で刺す程度でいいでしょう。 それによって力の差を覚えさえ、徐々に飼いならして行くのが最善です。 あまり初期から激しい体罰を加えると、まりさ種でなくとも恨みを抱く可能性があるので注意が必要です。 「おにいさんはやくれいむのところにはこんでね! あとここからだしてね!」 「……ゆっくり、一つ聞こう。これは誰の飯だ?」 「おにいさんばかなの、なんかいいえばわかるの? そのごはんはれいむのだよ、ゆっくりりかいしてね!」 「あっ、そう。馬鹿には今日の餌はなしだ」 そう言うとお兄さんはれいむの見ている前で黙々と食事を続ける。 どおじてだべじゃうのおぉぉ、などと色々聞こえて来るが、お兄さんにはただの雑音に過ぎない。 そして全て食べ終え、ごちそうさまと手を合わせた。 「明日お前に餌をやるかどうかはお前の態度次第だ」 「れ゙い゙む゙のごはんがあぁぁぁ」 「……ほんとに飼えるのか、こいつ?」 不安を覚えながらも、れいむを入れた箱に布を被せ、押入れにしまいこむとゆっくりは寝室へと向かう。 あの調子で騒がれた煩くて寝れやしない。 明日からの躾をどうするか考えながら、お兄さんはゆっくりと眠りに付いた。 本格的な虐待……ではなく調教は次回くらいで 躾マニュアルみたいな感じ書こうとしたけど上手く書けないな…… このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2695.html
Worning! 直接的な虐待描写はありません 想像力を働かせて楽しんでください うんうん描写が無い可能性は100%ではありません ぺにまむ描写がある可能性が0とは言いきれません やぁ! 僕は虐待お兄さん!」からの虐殺やお兄さんによる痛い主張がある可能性は否定できません 上記が受け入れられない読者は早々に立ち去らないと気分を害します □月○日 『ゆっくりの巣と思われる穴倉からいくつかの紙束を発見。どうやらゆっくりが書いた日記のようなものらしい。 興味を持った所長の指示でこれを翻訳する事になった。 面倒な仕事だと思ったが、日記自体は漢字の間違いやひらがながやたらと多かったものの、ゆっくりが書いたものとは思えないほど きちんと整理されていた。これなら与えられた期間内に終わるだろう。余った時間はせいぜい家でゆっくりさせてもらうとしよう』 加工所職員の日記より ○月×日 今日から日記をつけることにした。 覚えた大事な事をこうやって書いておけば後になって忘れてしまってもちゃんと思い出せるだろう。 少し面倒臭いが立派な都会派になるためにはきっと必要な事だ。 ○月○日 お母さんに日記の事を話すと凄く褒めてくれた。「ありすみたいな都会派が娘で鼻が高い」と言っていた。やっぱり日記を書き始めてよかった。 ただ友達のぱちゅりーに見せたら「少し字が見づらい」と言われた。少し恥ずかしかったからもう少し字を練習しようと思う。 □月△日(ここを境に字が急激に綺麗になっている) 「ありすは立派な都会派だからもう一人でも大丈夫」とお母さんに言われた。お母さんと離れるのは寂しかったが、いろんな所へ行って もっと素敵な都会派になってほしいと言われたので泣く泣く家を出た。 日記はまだ書き続ける事にする。 □月○日 今日、素敵なまりさと出あった。 あたまに桃を載せた変な子にまとわりつかれている所に颯爽と現れて助けてくれた。今までも何匹かまりさを見たことはあったけど、 そのまりさ達とも比べ物にならないくらいとってもゆっくりしていた。 それから二人でゆっくりした後、「また明日」って言って分かれた。こんなに明日が待ち遠しいのは生まれて始めてだ。 □月□日 まりさにプロポーズされた。 あまりに急すぎて混乱してしまって明日答えるって言って逃げ出してしまった。 まだ頭がうまく回らないので今日の日記はこのくらいにしておく。明日はちゃんと返事できるだろうか。 □月☆日 まりさといっしょにゆっくりする事になった。凄く嬉しい。 話し合った結果、まりさの巣でゆっくりする事になったので今日からお引越しだ。とても大変だけどまりさが一緒だからちっとも辛くなかった。 巣についたらたくさんすりすりして、元気な赤ちゃんを作ろうねとまりさと約束した。 こんなに幸せでいいのかな? 誰かにちょっとわけてあげたいくらい! □月●日(文字が滲んでる上紙がくしゃくしゃになっていた) 朝起きると、巣の中でまりさが死んでいた。 真っ黒になって頭からきもちわるい物をたくさん生やしていて、帽子がなければそれがまりさだとわからなかったかもしれない。 まりさの周りにはちっちゃくて黒くて丸いものがたくさん落ちてた。よくわからないけどきっと悪いものだと思ったから巣の外に 捨ててきた。 辛かったけどまりさの遺体を食べた。とっても甘くて美味しかったけどちっとも幸せじゃなかった。 どうしてこんなことになってしまったんだろう。昨日の夜、たくさんすりすりしてふぁーすとちゅっちゅもしたのに。 そういえば、昨日いつ寝たのかよく覚えていない。 □月▲日 まりさの巣にいるとまりさの事を思い出して辛いので、他の巣を探す事にした。 行くあても無い旅になるので、しばらく日記は書けないかもしれない。 ×月×日 ドスの群れと出合った。 正確には3日前、倒れている所を助けてもらったんだけど。 この群れでゆっくりさせて欲しいと頼むと、ドスは快く迎えてくれた。一部、レイパーのありすに酷い目にあわされたゆっくり達は 嫌がっていたけどこれからゆっくりしていけばきっと仲良くなれるだろう。 まりさの分までゆっくりするから、天国で見守っててね。 ×月○日 群れのれいむが死んでるのを見つけた。 朝起きたら目の前で真っ黒になったれいむが死んでたのだ。驚いて外に飛び出るとそこはドスに案内してもらった自分の巣じゃなくて れいむの巣だった。 何がなんだかわからないまま群れの皆に報告したら昨日のレイパーありすの被害者達に体当たりされた。何でもれいむの死に方がレイパー に殺されたゆっくりと同じ死に方らしい。 どうしてそんな事を言うのかわからなかったが、偶然居合わせたゆっくりさとりが無実を証明してくれた。 レイパーの被害者達は納得がいかなそうな顔をしていたが、仕方が無い事だ。あのゆっくり達も被害者なのだから。 事件の犯人かもしれないという話が広まったのか近所のゆっくりが変な目を向けてくる。それを気遣ってくれたさとりが巣に来てくれた。 思ってる事が伝わってしまうのは少し恥ずかしい。けど「さとりは素敵だ」って思ったらさとりも真っ赤になって恥ずかしがってたので それはお互い様だ。 今日はちょっと寒いから、これを書き終わったら二人で寄り添って寝よう。 それにしても、どうして私はれいむの家にいたんだろう。 ×月□日 朝起きると、丁度さとりが死んだ所だった。 頭から何十本も蔦を生やしたさとりが「どうして」と言い残してそれっきり動かなくなった。 何がなんだかわからなかったけど、怖くなってそのまま群れを飛び出した。 なんだか妙に頭が痛い。 ×月●日 気がついたら見たことも無いゆっくりが何匹も死んでいた。 怖くて怖くて仕方がなかったので逃げ出した。まわりにいたちいさくて丸いのをいくつか潰したけどあれはなんだったんだろう。 もうすぐ冬だし、冬篭りの準備をしなきゃ。 頭が痛い。 ?月?日 酷い頭痛に目を覚ますと冬になっていた。 周りには何匹ものゆっくりの死体と自分を「お母さん」と呼ぶ大量の小さいゆっくりがいた。 ご飯も大量にあるし、巣の防備も完璧だったがこんな事をした覚えはないし、何より黒ずんだゆっくりの死体とわけのわからない事をわめく 子供たちが恐ろしくて堪らなかったので全部潰して一箇所に固めた。 それにしても頭が痛い。 ?月?日 春になった。ゆっくりが死んでいた。頭が痛い。 ?月?日 頭が痛いのに加えて起きたばかりだというのに眠気が酷い。またゆっくりが死んでる。 ?月?日 なんだか口の中が甘い。頭が痛い。目の前に真っ二つになった小さいまりさがいた。でも眠くて頭が痛いのでどうでもいい。 ?月?日 痛い痛い痛い痛い痛い痛い頭が痛い眠くて眠くてたまらないのに頭が痛くて眠れない 顔に甘いのがついてる甘くておいしいけど頭が痛いから幸せなんかじゃない まりさがうるさい耳元でがんがんがんがん騒いでうるさくてうるさくて仕方が無い真っ黒なまりさに体当たりして潰したけどまだ 音はやまないうるさいうるさい頭痛が止まらない眠くて痛くてどうしようもない 気持ちよくなりたい ?月?日(これ以降の紙はずたずたに裂かれていて、復元した後も文字や文体が激しく乱れていた) すっごくさわやかなきぶん おそとにでるとまりさがいてきもちよかった ?月?日 れいむがいた まりさじゃな いけど が まんがまん ?月?日 まりさがいた から きもちよかった ?月?日 ぱ ちゅり すご く きも ちいい ▲月□日(微かに震えているものの文字が戻る) 目を覚ましたら、書いた覚えのない日記が積み重なっていた。眠くて頭痛が痛い。 怖くなったのでそれを破きました。頭がすごく頭痛して眠い。怖くて怖くてたまらなくて頭が眠い頭痛。 巣の入り口から外を見るときもちよさそうなまりさがいました。 あれ、なんだか頭が痛いのが納まったけど、か わり にす ごく ね む ○月○日 素敵なまりさと出会いました。 まりさも小さいまりさもいつも通り気持ちよかったです。 作者当てシリーズ「俺が誰だかわかるまい~」 おまけ 「ぺにぺにからしーしーするよ!」 ジョロジョロー! 「まむまむからうんうんするよ!」 ブリブリー! 「やぁ! 僕は虐待お兄さん! ひゃぁ我慢できねぇ虐殺だぁ!」 ズゴーン!グチャ! 「「ゆびゃー!」」 「ゆっくりは悪! 虐殺は正義!」 おわり このSSに感想を付ける